小説 | ナノ

襟首を思わず掴んで引き上げる。
荒い呼吸と見開いた目線が突き刺さった気がした。
「っ!誰も!あんたの事情とか環境なんか知らないわよ!!それでも…お互いを知るために友達作って、話して遊んで、人生歩んで行くんでしょうが!!あんただけが苦しんでると思ったら大間違いよ!」
怒鳴りつける。唾液が口の中を満たしてくれないから口が乾いてしょうがない。喉が枯れる。
「……、」
驚いた顔の少年。睨む私。もう言いたいことはなくなったから手を離した。
「…言いたいことは言ったわ。じゃあね、シンジ君。あとはあんたが決めろ。」
帰りたくなったから帰ると、鞄を乱暴に取って教室を抜け出す。

なんであんなこと言ったんだろう。



久しぶりの寄り道。寄り道とは言っても友達も誰もいない。街中の小さな公園でひたすらブランコを漕ぐ。ここは砂場とブランコしかない寂しい公園で小さい頃誰かと遊びに来ていた思い出がある。誰だっけ。




そして目が覚めれば私は視界のぼやけた中、大きな紫色の何かと血飛沫のついた瓦礫と土が見えていた。あぁ私は死ぬのか。下半身の感覚がない。体中の水分が抜けてゆくのは何故か感じ取っている不思議な体。気持ち悪い匂いと吐き気。もう脳は無理だと悟っているのに、心臓は生きたいと血液を体中に運んでいく。無意味なのに肺に酸素を取り込もうと呼吸があがる。
生きたいのか私は。あぁ生きたい。まだ生きたい。最後ぐらい、普通に死にたかった。あいつの乗ったロボットに殺されるなんて嫌だったな。なんであいつのこと最期に思ってるんだろ。だって昔の私とそっくりで、嫌だったんだ、あのまま、孤独と言葉にできないような絶望と苦痛に押しつぶされて病んでしまって人生に疲れて毎日死にたいと思う生活が続くなんて嫌じゃないか。だからあんな孤独を選んで過ごすよりみんなと接して過ごしたほうがきっといいよね、なんてお人好しだったかな、馬鹿しちゃったかなぁ。シンジ君の過去は、私より凄惨だったのかも。シンジ君ねぇ無意識に私はあなたのそういうところが嫌いででも好きだったよ。似たもの同士惹かれるのかやねそれなのに私ったらあははやぁ世界は美しいねだれあなただれあなただれあなただれあなたあぁ天使さまお母さんお父さん迎えにきてくれたの嬉しいなだれあなただれあなただあぁ世界は美しい!

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