Aの憂鬱、bの純情28
またぬけぬけと何を言い出すんだか。
余計怒られますよ…
デイモンは紅茶を啜り、そっとGを窺えば、長い指先を曲げて合図らしきものを送ってきた。
「……」
そっと、音もなく雨月もナックルも席をたつ。
デイモンはすぐに納得すると、カーテンの向こうで冷や汗を滲ませ怯えるランポウの襟首を引っ張った。
「ふにゃ!?」
小さい悲鳴をあげる口を塞ぎ、ランポウ含め、5人はその場を立ち去る。
「ひっ、ひどいんだものね〜、D氏は引っ張りすぎですー」
「あのまま居たほうがずっと悲惨なことになってましたよ…感謝なさい」
「うぇ?」
「ヌフ」
意味ありげに扉の向こうを見やるデイモンにキョトンとするランポウであった。
はたして――――
そもそも『命令』というものに嫌悪感しか持っていないアラウディは怒りを通りこして逆に冷静になっていた。
一筋垂れたジョットの鼻血にすらクスリともしない。
「そんな体たらくの君が、僕に何を命じる気?」
ジョットはうつくしい仕草で鼻血を優雅に拭った。
ここにデイモンが居たら紅茶を盛大に吹き上げて大爆笑しただろう。
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