Aの憂鬱、bの純情25
それが見当違いの望みだということは天然気質なジョットにでも分かっていた。
アラウディが自分を受け入れたのはGの依頼であって、断じて個人的な愛情があったからではない。
「…………なに、甘えてんの」
何にも言わないで、ただうなじにぺったりと張り付いてきたボスをアラウディはいつもの冷徹な目で見やった。
ひとが「あつい」と言っているのに。
しかし、潤んだオレンジ色の瞳がまっすぐに向けられていて、アラウディは言葉に詰まる。
この男の縋るような目線はワザとか。
「…まあ。いいけど」
仕方無く、好きにさせてやるとジョットは安心したようだ。
「どうせなら、腰でも撫でてよ」
「痛むのか」
「別に。でも事後には相手を労ってやるのも愛撫のうちだからね」
「そうか」
律儀にアラウディに従うジョットに笑みがもれる。
「きみに命令できるのはGか僕、くらいかな…」
「逆に俺は、Gにもおまえにも命令できない」
ボスのくせに何を言ってるんだか。
「すればいいじゃないか、命令くらい。ボスらしく」
「従ってくれるのか?」
「内容によるね」
こいつに、まるで壊れ物のように慈しんでもらうのは、悪くない。
汗ばんだ体は快適とは言い難いが、ジョットの手が優しく皮膚をなぜるから、アラウディはいつしかうっとりと眠ってしまった。
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