Aの憂鬱、bの純情11


経験のないジョットでも、わかる。
こんな所は足で踏みつけるべきモノではないと。

「何を、し…!?」
「愛撫だよ。そんなことも分からないの」

ぐ、ぐっ、と緩急を織り交ぜてズボンの中央をいたぶるアラウディは手を後ろについて悠然と嗤った。

「…ッう」

アラウディが冗談でやっているのか、本気で苛めにかかっているのか、ジョットには区別がつかない。
突然始められた暴挙に圧倒されるだけである。


なんて瞳だ。


さっきアラウディの眼差しに優しさを感じたのは間違いだったようだ。
今、アクアマリンに宿る煌めきは傲慢そのもの。

「どうだい?気持ちいいかい?」

妖しい声音で囁かれても答えようがない。

「んゥ!」

器用に足指が曲がり、ズボンの布地ごしに性器が揉まれる。
図らずも、呻きが漏れた。

「は…ぁ」

気持ちいい。

ひとに自身を触れられるのは初めてだ。
足先で急所を踏みにじられて快感に思うのは滑稽だろうか、と自分が心配になる。

「止めて欲しいなら止めろって言えば?」

ジョットのそれをいたぶりながら、アラウディは言い放った。
組織のトップを屈辱的な形で可愛がっているという優越感。

さて、彼がどう出て来るか……。

「!」

ジョットの瞳が上目遣いにアラウディを見返してきた。

長い前髪の隙間からのぞく、涙の膜を張って潤んだ幼い少年のようなオレンジ色の瞳。
気持ちよいのと不安なのとで八の字に寄った眉に、アラウディは、はっと息を飲む。

「…イイ顔をするじゃないか」

何故かキュウと胸が絞られた気がして、アラウディはシャツの前を握った。


―――可愛い。

一瞬、そう思わされて、アラウディはさっと感情に蓋をした。

「う、アッ、ァ!!」

ジョットの顔が情けなく歪んで、腰が跳ねる。

「ア ラウ、ディ…っ」

余計なことを考えて指加減を誤ってしまったらしい。

「……、あの…出来るなら、もっと優しく教えてくれ…」


きみが悪いんでしょ
あんな目で見るから


強引な責任転嫁。

だが、悪いだけではなかったらしい。
ズボンの前が膨らんで窮屈そうになっている。




**

4.8






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