Aの憂鬱、bの純情3



「G。きみからこんな依頼がくるとは思わなかったな」

アラウディは細い指で無造作にネクタイをゆるめ、ことりと首を傾げてみせた。
きちんと手入れされているブロンドがサラサラ揺れて白い頬にかかる。

些細な仕草さえも計算し尽くしているのか、その髪の毛のかかり具合やら、長い首の細い所やらをジョットは観察していたい気がした。
が、ちらっとアラウディと目があうと居心地の悪さは増すばかりで、結局、視線はGにばかり向くしかない。

それすら見抜いているのだろう。
アラウディの色素の薄い眼差しがどんどん尊大に酷薄になってゆく気配がする。

やはり、苦手だ。
守護者の中で一番苦手だ。

「G、依頼とは??」
わざわざアラウディを呼び出すような事態が起こっているという話は全く知らない。
ジョットは不審そうにGに尋ねた。

「無理を言って悪かったな。頼めるか?」
「アラウディになにを頼んだんだ?」
「僕に出来ないことなんてないさ」
「あの…」
「もう俺には手に負えないぜ。よろしく頼むアラウディ」
「無視するな!」

見事にスルーされたまま話が運ばれてジョットはストップをかけた。
ぐりん、とジョットを振り向くGとアラウディ。

「確か……俺たちが初めてあった日のことだ。覚えてるかジョット」

あくまでも質問に答える気はないのだ、この右腕は。
鋭い目をしたまま、Gは言った。

「おまえ、アラウディをナンパしようとしてたっけな?」

「〜〜〜っ!?なんだ突然!そ、その話はしなくても良いだろう今は、」

わたわたと、端正な顔を歪めるジョットに、アラウディが口の端を吊り上げる。

「何ソレ。初めて聞くね」

いつの間にか変な汗が滲んでいた。
背中が寒いのに熱い。

「違うんだ。あれは…」
「違わねーだろ」

どうして俺はこんな吊し上げに遭っているんだ!
しかもアラウディ本人の前で…

恨めしげなジョットをものともせず、Gは続けた。




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