あの子をメニューに例えたら:前編(王様綱吉)

※とてもくだらない
※綱吉が真っ黒でバイすぎる件(女子も男子もバチコイ)

※ひばりさん可哀想

※やや血の表現あり













あの子をメニューに例えたら:前








「京子ちゃんは食べ物に例えたら、苺のショートケーキだね」

薄暗い隠れ家。
愛するファミリーたちが床に群がる中、困ったような顔をして彼らに囲まれていたツナが、突然そう言った。

「可愛くて、みんなに愛されてるってとこが、ぴったりだよ」
「苺のショートケーキ…なんか嬉しいな。ありがとっ、ツナ君」
「はひー、京子ちゃんうらやましいです〜ツナさんツナさん、ハルもフードに例えてくださいー!」

そうなれば、ツナの自称未来の妻も黙ってはいない。
純真な瞳に対抗心の炎をメラメラ燃やし、ハルはツナに詰め寄った。

「ハルかぁハルは……うーんと、!あ、苺大福だ!」
「はひ!?苺大福…」

まさかの和菓子チョイスにハルはキョトンとする。
「うん苺大福。甘酸っぱくて、中の苺がコリコリしてるのに求肥はなめらかモチモチでさぁ…」

ちょっとだけエッチだよね、苺大福って。

「はひ、……」

ハルの耳元で囁けば、彼女は真っ赤になってしまう。
脇からそれを睨みつけていた獄寺が負けじとツナの足元にからだを擦り付けた。

「調子に乗ってんじゃねーぞアホ女!ねっねっ、10代目、俺もお願いします!」
「ツナー俺も俺も」
「うっせー野球バカ!俺が先だっ」

ツナの気まぐれがきっかけで、みんなを食べ物に例えよう、というイベントがちょっとした盛り上がりを見せ始める。
まるで暗がりにぱっと花が咲いたようだ。


「獄寺くんはそーだねぇ…マグロのカルパッチョかなぁ」

「山本は、鰻重!お兄さんはタンドリーチキンですかねー」

「おお!タンドリーチキン!極限に男の食い物だな!!」



(くだらない…)



「……」
「沢田綱吉、僕のクロームも食べ物に例えなさい」
「あ、骸さま…私は、いいです…」


(嘘ばっかり)


群れから少し離れたところで、黒髪の少年は心の中で毒づいていた。
だが口に出したりはしない。

鋭い眼差しも闇に溶けそうな漆黒。

その先にいるクロームと呼ばれた少女は、遠慮がちに、しかし期待をほんのり浮かべた上目遣いで小柄なボスを見上げている。


「クロームは間違いなく生チョコだよ。口にいれるとひんやりしてて、あっという間にやわらかーくとろけてさぁ。俺、アレ大好きなんだよねっ」

「っ……、ありがと…ボス……」

ボスの文言に、クロームは随分と満足したようだ。
見守る骸の自慢げな顔にふんわりと幸せそうに微笑んでみせた。

(ばかみたい)

少年は出来ることなら、立ち去りたかった。
こんな愚かな群れ。

しかし動けない。
どこにも行けない。

少年の両腕はネクタイで縛られ、天井から垂れた鎖に結びつけられているのだ。



「どーしたんですか、ひばりさん」

憎々しげな目線に、ツナは小首を捻っている。

「ずっと跪いてるの辛いですか?」

心配そうに近付いてくる足音。
雲雀のうなじに冷や汗が伝う。

「ね、ね、お返事は?」

雲雀を覗き込んだツナは、やはり困ってるように眉を八の字にしていて。
弱い小動物そのものなのに。


雲雀を拘束したのは、このツナなのだ。

「でも、ひばりさんが悪いんだと思いますよオレ。ひばりさんがオレの言うこときかずにみんなと喧嘩しようとするから、リボーンが頭を冷やさせろ、って…」

ある者は忌々しげに、ある者はほくそ笑んで、雲雀とツナを見ている。

「10代目ほっといていーっすよ、そんなヤツ」
「えー。だって…」

雲雀の眦は否応なしに吊りあがりツナを射抜いていた。

こんな屈辱。
草食動物の群れの前で身動きとれない自分が歯痒い。

「あっれ、まだひばりさん怒ってるみたいだ…オレがリボーンに怒られるんですからいい加減折れてくださいってば、…っ、いった!!」
「ツナ!」
「10代目っ」

ツナの異変に空気が一気に張りつめる。
何気なく髪に伸ばされた手に、雲雀が突然噛みついたのだ。

が、ツナが噛みつかれたままの手を素早く雲雀の口腔内に押し込めるようにグリッと突き付けると、雲雀は思わずのけぞって、力をゆるめてしまった。

「うっそー。何するんですかぁ。血ぃ出たんですけど?」

ツナはクスクスと笑っていたが、心配そうにツナの手を見ようとやってきた京子とハルが、その横顔にびくりと立ち竦む。


「もぉ。めんどくさいけど、しようがないな〜、」

感情のこもっていない、冷たい冷たい声音。

唯一、舌に残る血の味だけが、ツナが雲雀と同じ『生き物』だという証拠のようだった。











(前編、おわり)



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めっちゃイヤなツナでごめんなさい







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