Cheesecake Tuesday




「火星の日ですねぇ」

「そうだね。昨日はお月さま?」

「はい。もうすぐ水星ですねぇ…」

先程までそんな会話をしていた。

なっちゃんはとても、綺麗だと思う。

ほわほわした柔らかい髪の毛は時折きらきらして、優しい笑顔にピッタリと当てはまる。

ふわふわな雰囲気なのに瞳の力だけは強くて、ぐっと見詰められると目が惹き付けられて離せなくなる。

そう、例えば今とか。

「…な、なっちゃん」

ようやく絞り出した声は、思うよりも震えていた。

低い声が私の耳をくすぐって、胸の辺りがざわざわする。

「ん?なんだ?」

あ、さっちゃん。

もうなっちゃんもさっちゃんも一人の「四ノ宮那月」だけれど、区別をつけるために結局私は呼び分けている。

複雑すぎてうまくいえないけど、二人は同じで違うのだ。

…って、今はそれどころじゃない。

「こんな状況になっても案外余裕あるな?」

「ない!全然ないです!」

自分でも顔が熱くなるのがわかる。

今の状況とは、所謂壁ドンである。

部屋の隅っこで、夜で、部屋のライトは私を追い詰めたさっちゃんの長身で遮られていて。

逆光になったさっちゃんはやっぱり眼光が強い。

私の鼓動は早まるばかりで、これではさっちゃんの思うつぼだ。

「さっ、ちゃ…」

「…砂月だ」

「しってる…」

とても寂しそうな顔で言う。

あれ、おかしいな。

もうさっちゃんは那月だ、って、本人の口から聞いたはずなのに。

「なあ、なまえ」

「ん?」

「もしも、俺と那月が双子だったら…お前は、どっちを選んだんだ?」

なんて意地悪な質問なのだろう。

私はどちらも好きなのに。

これは二股になりうるのかもしれない、そんな考えが頭をよぎる。

すぐに思い直したけれど。

だって、私が好きなのは…

「好きにならないよ」

「っ!」

「…私はさっちゃんとなっちゃんで、一人の那月が好きなんだよ」

どちらが欠けても足りない。

どちらが居ても、好きになれない。

二人で一人、とはよく言うけれど、この人ほどそれに忠実な人はいないと思う。

「…それが聞きたかった…」

ほっとしたような、かすれた声が耳元でした。

胸がドキドキして、いとおしくなって、背伸びをして腕を伸ばす。

少し屈んだ背中を撫でて、首に腕を回してぎゅっと抱き寄せる。

ため息と一緒に吐き出された言葉がこれ以上ないほどに優しくて、愛されていることを実感した。

「…すきだ…」

脆く甘く、優しくとける。

盲目的と言われそうなほどに深まる愛は、まだ留まることを知らない。


チーズケーキチューズデー

どこまでも深い甘さの愛をあなたに。



0801
チーズケーキは苦めの飲み物と一緒に飲むのが好きです。






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