早朝五時、
雨の早朝は静かで、肌寒かった。
まだほの暗い部屋で、そろりと起き上がった隣ではなまえが眠っている。
時折眉間にシワを寄せるあたり、嫌な夢でも見ているのかもしれない。
それでも起こすのはなんだか気が引けた。
チカチカと光る携帯を手に取ると、いくつかのメール。
そのうちひとつは、旧い友人が遠くへいく、という報せだった。
無機質なゴシック体の文字は確かにそう告げていた。
雨が、強くなる。
どう返していいかもわからず、しばらくの間携帯を片手に呆然としていた。
ただ、悲しい報せだと思った。
パチン、と携帯を閉じる。
遥か日本の裏側にいる友人を、遠い人だと思った。
「一人だと変なこと考えるな…」
はぁ、とため息をついて再び布団に潜り込む。
ごろん、と横になって目を閉じると、不意に暖かいものが頭にふれた。
「…しょぉ、ちゃん…」
寝ぼけて呂律の回らない声。
なまえだ。
寝返りをうって顔を向き合わせると、とろんとした目が心配そうにこちらを見ている。
「悪い、起こしたか」
「らい、じょー…ぶ?」
大丈夫?と本人的には言っているのだろう。
ゆっくりと俺の頬に、寝起きの暖かい手がおかれる。
「ん、大丈夫だから」
ぽん、と頭に手をおくと、緩んだ顔に笑みが浮かぶ。
柔らかい指が頬を撫でてきて、なんだかくすぐったかった。
「しょぉちゃん、さみしそー…で、」
「そうか?」
「ん、」
小さくこくりと頷かれて、隠し事は難しいと悟る。
「わたし、いるからね…」
うとうと、とその瞼が閉じては開くを繰り返す。
意識もぼんやりとしているだろうに、絞るように口から出てきたその言葉は、なんとも優しいもので。
「…ありがと、な」
ごそごそと衣擦れの音と共になまえに近付いて、柔らかい頬に口付ける。
いつのまにか再び寝入ってしまった顔が愛しかった。
静かな夜明けと共にもう一度眠りにつく。
そこに寂しさは、もうなかった。
早朝五時、
足りない部分は君で埋める。
0923