守るように、覆い隠した
がたんごとん、がたんごとん…
規則的な振動が心地良い。
通り過ぎる遮断機の警告音。
窓の外の景色は徐々に建物が減って、緑が増えていく。
時折、暑そうに汗をぬぐいながら歩く人を見かけた。
夏の光景とは裏腹に、車内は冷房が効いていて気持ちよかった。
平日の昼間となると乗っている人は少なくて、ひどくがらんとしている。
そんな車内の中で、俺たちは特に話もせずに座っていた。
「遠出しようよ、翔ちゃん」
そう話を持ちかけられたのは梅雨のことで、ようやく学校が落ち着いたのは梅雨明けになってからだった。
学園長に特別に許可を頂いて学園を抜け出した俺達は、鈍行でなまえの地元に遊びにいくことにしたのだ。
恋愛絶対禁止令がある限り、付き合うことも思いを伝えることもできないけれど、友人として一緒に遊びにいくなら。
男女間の友情なんて成立すんのかな、というか俺の気持ちはもう友情じゃない。
…静かだと変なことまで考える…。
そうため息をつくと、不意に左手に体温を感じた。
そっと触れるような、小さな小さな触れ方。
ちらりと横目でなまえを見ると、あくまで視線はそっぽを向いている。
ほんのりと頬が赤いのは…考えるまでもないだろう。
もっとしっかり体温を感じたくて、膝にかけていた上着をばさりと触れた手の上にかけた。
その下で、ぎゅっとなまえの手を握る。
「っ、!」
ビックリした顔でこっちを向いたなまえに、人差し指で「しーっ」とジェスチャーする。
ほとんど人がいないから、別に内緒にする必要もないんだけど。
ダイレクトに握るのはなんだか気恥ずかしいからな。
さらに赤くなってアワアワしていたけど、すぐに嬉しそうな笑顔に変わった。
ふわり、とこれ以上ないほどに優しく微笑んだあの笑顔を、俺は絶対忘れない。
守るように、覆い隠した
誰にも内緒の、恋人繋ぎ
0729
初翔ちゃん。
せりふが、ない。