負けを認めてくださいな
ピラフを頼んだ哉太は、深刻な顔つきで皿の上を見つめていた。
そして、パスタを頼んだ私の皿を、恨めしそうに睨む。
「…交換しようか?」
「…いい」
ピラフには、グリンピースがのっていた…。
哉太はグリンピースが苦手らしい。
錫也がどうのと言っていたが、子供らしいことに変わりはない。
むう、と眉間に皺を寄せる姿が、どうしても微笑ましく見える。
もちろん、本人に言えば益々拗ねるのは目に見えているので言わない。
フォークで器用にグリンピースを避けていたが、私の視線を感じたのかうっと唸って手を止めた。
「…んだよ」
「残してもいいんだよ?」
くすくすと笑いながら言うと、しばらくグリンピースと睨みあった後、
「残さねーよ!」
とはんば意地になって口にグリンピースを突っ込んだ。
少々涙目になっているのは、それほど苦手ということだろうか。
水と一緒に一気に飲み下して、けふっと息をつく。
「頑張ったね〜」
思わず手を伸ばして、ふわふわした髪を一撫で。
「わっ、バカ、撫でんなっ」
崩れるだろ、と。
子供扱いされるよりも、彼にとっては髪型のほうが重用らしい。
涙目になりながら頬を染めている姿は、転んでも立ち上がったのを誉められた男の子のようだ。
そんな可愛い彼は、私の立派な彼氏様である。
負けを認めてくださいな
…ピラフと一緒に食べたら、少しは味がわからないと思うんだけどね。
0615
友人がグリンピース嫌いだったので、つい。
私はグリンピースよりオクラが苦手です。