白い肌




海の日。

久しぶりの祝日なので、みんなで海に行こう、という話になった。

この間来たときは春だったから泳げなくて、波打ち際で遊ぶだけだったけれど、今回はちゃんと泳げる。

だから水着を持ってくるのは約束だった。

何が言いたいかって言うと、

目の前の恥ずかしそうに笑いながら「どうかな?」なんて言ってくるなまえが、

正直めちゃくちゃ可愛くて錫也たちにすら見せたくない、なんていう

俺の我儘が通るはずもないこの現実をどうすりゃいいのか、って話。

「…い、いいんじゃねーの?」

「ほんとっ?…ふ、太ってるとか思わない?」

「思うわけねえだろ!…別にぶくぶく太ってたって、そんな変わんな…いてっ」

フォローが仇になったらしく、ぺちんと叩かれた。

「ひどいよ、哉太」

「フォローのつもりだっ」

「なってないし!」

心なしか笑いながら月子のほうに走っていくなまえ。

と、日差しのなかにでたとたん、慌てたように戻ってきた。

「日焼け止め忘れてたっ」

「焼けてもいいんじゃねーの?」

「やだよ、黒いのいやだもん」

パラソルの下で鞄をごそごそ漁るが、なかなか見つからないようだ。

うそー、とかやだー、とか言いながら必死に探しているけれど、どうやら忘れたらしい。

「えーどうしよ、月子持ってたりしないかな…」

「…俺、もってるけど」

「うそ!貸して!」

「いいぜ」

ほら、と手渡したところでなまえがはて、と首をかしげた。

「なんで哉太もってんの?」

「…肌弱いからな、俺。あんまり焼けたくねーんだよ」

「そうなんだー、知らなかった。んじゃ、遠慮なく借りるね」

つーっと腕や脚に垂らして塗り広げて、いつもより露出している肩や腹にも塗っている。

…背中はいいのか?なんて思っていたら、なまえが躊躇なく俺にいった。

「あ、哉太、背中塗って?」

「…はっ?」

「だって塗れないもん」

ほらはやく、と日焼け止めを渡して背中を向けてくる。

…ここにいるのが、俺でよかった。

手にいくらか垂らして、ちょっと生唾を飲み込みながら背中に触れる。

「ひゃっ」

「あ、悪ぃ」

冷たかったらしい。

水着の紐を少し持ち上げて紐の下にも塗ってやる。

すげー変な感じだけど、別にやらしいことしてるわけじゃねえし。

誰に宛てるでもない言い訳を心のなかでしながら、腰の辺りまで塗ってやった。

暑い日差しに上気した肌はあったかくて、触るとすべすべしてなんかきもちいい。

「…うし、これで大丈夫だろ…、って、なまえ?」

固まったように動かないなまえの顔を覗く。

すると、耳まで真っ赤にして唇を少し噛んでいるなまえがいた。

「…なまえ、」

「か、かなた…」

絞り出すような声が、波の音に呑まれていく。

「…てつき、やらしい」

かすれた声でそれだけ言うと、逃げ出すようにして砂浜をかけ降りていった。

30秒くらい放心してから、その背中に向かって叫ぶ。

「…んだよそれ!」


白い肌



むず痒くてくすぐったくて、でもそれはきっと哉太の手だから。





0716









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