欲しいのは愛情
「宮地って月子ちゃんのこと好きでしょ」
「ッ!?ゲホッ!!」
弓道部の休憩時間、水飲み場で宮地が水を飲んでる時に私はわざわざそう言ってやった。
「あはは、図星か、顔真っ赤だぞー?」
「おまっ、お前は…ッ!」
からかうように笑ってそう言うと真っ赤な顔のまま彼は怒る。
「怒んないでよ、ね?でも宮地が月子ちゃんのこと好きなのは本当でしょ?」
「そ、れは…」
「バレバレなんだから隠さなくたっていいじゃん」
「名字は鋭いな…」
そんなの宮地を見ていれば、わかる。
月子ちゃんが好きなことくらい一瞬でわかる。
今だってスランプになってる月子ちゃんを心配して、いつもより難しそうな苦しそうな顔してるじゃん。
すぐわかるよ。
「月子ちゃん心配なんでしょ?」
「、あぁ…」
「声かけてあげたら?」
きっと月子ちゃんも、辛いとき宮地に声かけて貰えたらうれしいと思うよ。
「もう声はかけた」
「そうじゃなくてさ、」
「む…?」
「慰めたり励ましたり、一緒にいろいろしてやれっつてんの」
目の前のわからないような態度のニブチンに詳しい意味を伝える。
このニブチンはここまで言わなきゃわからないんだよなー。
「それは…」
「それは?」
「下手に励ましの声をかけていいものか、俺はわからない」
そう、彼は困ったようにいつもより眉間の皺を深く刻んで呟いた。
「バカ、そんな腫れ物に触るみたいな態度じゃなくて、好きならもっとわかってやろうとしてやれよ。近づいていけばいいじゃん。」
「名字…」
彼はハッと考えるような視線で私を見ている。
「好きなら大切にしなきゃ、ね?」
大切にしなきゃね。
「っ、あぁ…、ありがとう」
「おう、いいから行ってこい」
彼はまたハッとして私にお礼を言うから、私は何も無いように男前に友達として友達を送り出してやる。
「あぁ、あとでなにかお礼でもさせてくれ」
「いいってば」
それでも、律儀な彼らしい返事が返ってくる。
私は宮地のそういうところが好きだ。
「いや、感謝してる」
「…ん。じゃああとでジュース奢ってくれればいいから、早くいきなよ」
追い返すようにそう言うと彼は軽く返事を残して、水飲み場から去っていった。
そんな彼の後ろ姿を見て思う。
私も大切に出来たかな。私が大好きな宮地を思って大切に出来たかな?
好きな人の思ってることくらい、好きな人が好きな人くらい、わかるよ。
「…早くくっついちゃえ」
一人ぼっちになって静かな水飲み場に、心の籠もってないような悲しい私の呟きが響いた。
欲しいのは愛情欲しいのはアナタのお礼の言葉でも感謝でもなくて、アナタの愛情
∵ 欲しいのは愛情 (宮地龍之介)
うーん、うまく纏まらなかった。
その癖やっぱり短い。
短いのデフォルトですね。
前にも言ったけど夏組は月子ちゃん大好きなイメージがある。
部長に続き宮地も書いてみた。
あとは梓か。
20120502