君が弓を引く姿はとてもキレイで好きです。


「ねぇ、龍之介くん」


さらさらの髪、切れ長の瞳。


「む、なんだ?」


通った鼻筋に薄い唇。



「きょう部活見学していい?」


「…いいけど見てるだけだぞ?」



「なにさー、まるでいつも私が見てるだけじゃ飽きたらず邪魔するみたいな言い方じゃないかー」


「いやその通りだと思うが」



「むぅ…」


私が気に入らないのは彼の返答じゃない。

私が話し掛けても部活の準備に夢中で視線さえ向けてくれない彼。




「…別にいいけどさ。」


ちょっと寂しいけど弓道に夢中な龍之介くんはカッコいいから。


そんな風に思ってると大人しい私を不審に思ったのかようやく私のほうに視線を向けてくれた。



しょぼくれてる私を見て彼は自分のポケットを探り私の手のひらにポンッと一つ飴を渡す。


「これやるから、大人しく見ててくれ。な?」



相変わらず甘いものが好きなのか
彼はポケットやらにたくさんのお菓子を持っている。



「…わかった」


少し拗ねながらももらった飴を口の中に転がすと、甘いミルクの味が口に広がる。


暇な私は弓道場をぐるりと見渡す。



でも、今は放課後だと言うのに龍之介くんと私以外誰もいない。


月子ちゃんたちはどうしたんだろう?





「ねーねー、龍之介くん。
今日はなんでみんな来ないの?休みじゃないよね?」



ごめんね?大人しく出来なくて
でも、やっぱり君と話してたいんだよ




― 君が弓を引く姿はとてもキレイで好きです。


好きですが、



― さらさらの髪、切れ長の瞳。

― 通った鼻筋に薄い唇。


それよりも
君のさらさらの髪に触れたいし、その切れ長の目を的じゃなくて私に向けてほしいの。


それでね、君の整ったキレイな顔をみたいし、その薄い唇が私の名前を紡いでくれると嬉しいんだよ。




だから悪いとは思っていても、ダメだとはわかっていても
君への言葉がこの口から零れてしまう。




「…夜久たちはまだハロウィンの用意が終わってないから少し遅れると言っていたな。」


龍之介くんは少し考えるようにしたあとそういえばと答える。




そういえば明日は10月31日、
ハロウィンだった。


私は仮装する準備とかは1〜2週間前にしたから忘れてた



(わざわざ答えてくれるなんて優しいなー。私が勝手に騒いでるのに)



それに、クラスも学科も違う龍之介くんとはあまり話す機会がないだろうハロウィンという行事にそこまで興味がわかなかった。





そうだ

どうせ明日は言えないんだから…



「Trick or Treat!」



とびっきりの笑顔で言うと、目を丸くして私を見つめる彼。




「…む、悪戯は困る。」


少し眉間にシワを寄せながら、ポケットに入ってた全部の飴やらチョコやらをパラパラと私の手のひらに乗せてくれた。



「いい子だから、もう少し待っててくれ」



子供にするみたいにポンポンと頭をなでられ、

自分からやっておきながら子供扱いされて、
大人らしくかわされて、悔しい思いがでる。




(いいもん子供らしく全部お菓子食べちゃうんだから!)


もらったお菓子を次々に口の中にいれていった。




……

…………



最後の一粒の飴を口に放り込んだ時


「待たせたな」

と練習を終えたらしい龍之介くんに声をかけられた。



「…もしかして全部たべたのか?」


膝の上に山積みになったお菓子の空包みを見て、彼は目を丸くしている。



「だ、だって…」


さすがに食べすぎたと思い恥ずかしくなる。




「…Trick or Treat」


「ごめん、いま口の中に入ってるのが最後」


切れ長の目が珍しく意地悪そうに輝く。



「…んっ!」


いきなり私の唇にキスをしたかと思うと、
舌で少し開いた唇の隙間から最後の飴を器用に奪っていく。



真っ赤になって抗議をしようとした私の唇に「シッ」っと人差し指を立てた。




「お菓子をくれないと悪戯をするぞ…」





『…これはTrick or Treatって言うより、
Trick and Treatじゃないの?』


そんな異論は勿論口から出てこず



上手く言葉を紡いげない口には

消えた飴とは違う甘い余韻が残った。







(いくら、うるさくしたり龍之介くんのお菓子全部食べちゃったからってこれは恥ずかしすぎるからやめてほしい…っ)






-*-----


not長編夢主。



季節外れさーせんwww

でもこのネタは去年のハロウィンに考えたものなんで許してください←



あと、宮地は不意討ちで大胆になるのが
結構、私的にツボだったりします^q^



お粗末様でしたー



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