「スキだよ、誉くん」
「どうしたの?水月」
くすり、と笑う誉くん。
その美しくて甘い笑顔にまた今日も魅了される
「んー?スキだなって思って」
「ありがとう」
ニコリ、とまた彼は私に笑顔を向けて魅了する
でももう私、その笑顔じゃダメなの。
ドキドキしない、昔みたいに胸の真ん中がきゅんってしない。
「誉くんは?」
誉くんは私にくれないんだもの、『スキ』を。
もうね、あげるだけじゃあ満足出来ないの。私ワガママなの。
「僕もそうだよ」
ねぇなんで笑うの?なんでそんなキレイに笑うの?なんでスキって言葉は絶対に言わないの?
「そっか、あのさ…」
プルルルルル
私の声を遮るコール音。
それは誉くんのポケットから
「ごめんね、」
そう言ってサブディスプレイを確認してから、表情を変えて
「ちょっと出てくるね」
そう言って私から離れる誉くん
…なんでそんなにあっさり離れちゃうの?
この離れた距離じゃあ彼の声は聞こえない。
でも見える、誉くんの心の声と、私に向けるものと全く違う笑顔は。
「月子ちゃん、か…」
きっと誉くんの電話の相手は学園のマドンナ。
私よりずっと可愛くて、私よりずっと優しくて、私よりずっと…
誉くんが必要とする人。
あぁ
また、
彼は電話越しに聞こえる声を聞いて柔らかい笑顔を浮かべている
その表情はあの子に対して『愛しい』って言ってる
でもね誉くん。
その笑顔は、思いは、届かないんだよ?
電話では、その何よりも憎らしい素敵な笑顔は届かないの。
…彼氏がいる月子にその思いは届かないの。
だから、だから、
少しくらいその憎らしいくらい甘い笑顔を私にも向けてよ。
私だったら惜しみ無く受けとるのに、
私だったら貰った思いよりずっとずっと強い思いを誉くんに返せるのに。
なんで月子なの?彼女は私のはずなのに
誉くんと付き合ってるのは、私のはずなのに…
私には向けられないその思い。
あの子に笑いかける貴方の横顔が余りにも綺麗で、
私はその憎らしい笑顔に今日もどうしようもなく恋い焦がれる。
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リハビリを兼ねて。
悲恋はじめて書いた。難しいですね
夏組は月子大好きなイメージがある