※「恋はおあずけ」の少し前の話
※アニメ寄り設定











 僕はちっちゃくてかわいい物が大好きなんです。初めて会った時から翔ちゃんはとっても可愛くて、僕は翔ちゃんが大好きでした。けれど大きくなって再会した翔ちゃんと毎日お話する度にかわいいだけじゃないふわふわっとした気持ちが浮かんで来ました。翔ちゃんとお話するとふわふわして翔ちゃんが笑うとふわふわする。なのにそのふわふわは気まぐれさんで、翔ちゃんが他の誰かといるとぐずぐずになってしまいます。これは一体なんなんでしょう。
「それって恋なんじゃない?」
 クラスメイトの音也くんが笑ってそう言いました。
「その人を独占したい、って思ってるんだろ?いいなぁ…俺も恋とかしてみたいよ…。」
 独占、そうなんでしょうか。僕は翔ちゃんを独占したいんでしょうか。わからなくてモヤモヤします。翔ちゃんのことは大好きです。けれどそれが恋なのかどうか、わからない。………僕は恋なんてできるんでしょうか。

「あ?那月、何固まってるんだよ。」
 翔ちゃんが作ったカレーを食べながら考えていたらスプーンの上のご飯が冷えていました。目の前でお皿を空にしてしまった翔ちゃんが心配そうに声をかけています。ああ、こんな翔ちゃんもかわいいですね。
「翔ちゃん。」
「ん、なんだ。」
「恋ってなんだと思いますか?」
「こ!」
 恋という単語が翔ちゃんには恥ずかしかったみたいで今度は翔ちゃんが固まってしまいました。
「…お前、好きな奴でもいんのか?」
「はい。けれど恋なのかわからないんです。」
「……その、そいつの事ばっか考えたり、一緒にいたら嬉しかったり…そいつが自分以外の奴といるのが嫌だったり、とかそんなんじゃねーの?」
 顔の赤い翔ちゃんが僕の為に考えてくれた言葉は僕のふわふわとぐずぐずと同じでした。僕の顔を窺い見る翔ちゃんの青い瞳がキラキラしてお星様みたいです。翔ちゃんのちっちゃくてかわいいところは勿論大好きですけど優しい所も男の子らしい所も元気な声も照れ屋な所も全部大好きなんです。
「恋、なんですねぇ。」
 そう思った瞬間、ふわふわがちょっとドキドキしました。今までにはない感覚。翔ちゃんが少し笑ったみたいに見えてドキドキが跳ね上がる。ぎゅってしたいなぁ。可愛くてずっとぎゅってしてたい。
「翔ちゃん。僕は翔ちゃんに恋をしました。」
「ぶぇっ!?げほっげほっげほっ」
 翔ちゃんが飲んでいた水を喉に詰まらせました。
「ずっと翔ちゃんの事を考えてしまうし、翔ちゃんといるとふわふわして、翔ちゃんが他の誰かといるとふわふわがぐずぐずになるんです。」
「っ、わ…わかった、那月落ち着け。それは恋じゃない!」
 口元を拭いながら翔ちゃんが言う。少し涙目になっています。本当に翔ちゃんは可愛いなぁ。
「どうしてですか?僕はちゃんと翔ちゃんが好きですよぉ。」
「いや、よく考えろ。まず男同士だろ。」
「そうですねぇ。僕も翔ちゃんも男の子です。」
「男同士で恋っておかしいだろ!?」
「そうなんですか?留学していた頃は男の子にもたくさん告白されましたよぉ。」
「だーっ!誰か助けてくれ!」
 翔ちゃんは元気よく叫んで頭を両手で押さえています。本当に何をしていても可愛いです。
「翔ちゃん。好きです。」
 可愛くて可愛くて、言いたくなってしまう。僕の気持ちを翔ちゃんにわかって欲しいんです。
「っ、バカ那月!」
 翔ちゃんは顔を真っ赤にしてお皿とグラスを持ってキッチンに行ってしまいました。顔が赤いってことは翔ちゃんもドキドキしてくれてるんでしょうか。嬉しいな。
 ちっちゃくてかわいい翔ちゃん。かわいい翔ちゃん。翔ちゃんが僕と同じ気持ちになってくれたら嬉しい。僕は翔ちゃんを大切にするから。誰よりも大切にするから。






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