※アニメ寄り
※割とギャグノリ
※R15








 那月と付き合ってひと月になる。
 初めは男なんかとそんな関係になれるかよ、と思っていたがしつこく俺のことを可愛いだとか好きだとか言い続けるし、だんだん俺までその気になっちまって根負けした形だった。
 付き合ったその日に初めてキスをして、那月の熱とか感触とか全部に恋をした。アイドルになっても俺は那月に笑ってて欲しくて。一緒にちょっとした感動とか共有できたら嬉しいなって思う。これが愛だと気づいた。今じゃあ那月の笑う顔とか声とかが病気みたいに心臓の中で繁殖してる。
 そんな感じで、結構順調にお付き合いをしているワケで。溺愛すぎる那月にはまだ手を焼くけど可愛いなぁなんて思ってる。
「ノロケなら聞かないよ、おチビちゃん。」
「ちーがーうー!最後まで聞けよ!」
 那月のクラスは課外実習で今日は放課後まで帰って来ない。同じく放課後まで帰って来ない今日のデートの相手を待つレンにこれまでの経緯を話した。レンとトキヤには(那月のせいで)俺達の関係はバレたけど、わざわざ成り行きを話すのは初めてで少し恥ずかしい。とりあえず馴れ初めから話してしまってレンは呆れ顔だった。普通に話したつもりだったのに無意識にノロケてたのか?もしそうだとしたら恥ずかしすぎる!
「そ、それでさ!」
 慌てて声が大きくなった。やばい絶対今顔赤い。恥ずかしい。
「その、………って、どういう…タイミングで…するんだ?」
「なんて?聞こえないよ、おチビちゃん。」
「だから…その……え、…えっち…の、タイミング…だよ!」
 言い直すと逆に恥ずかしいと言うことを知った。大体こんなことを人に聞くなんて恥ずかしいけど、わかんねーから仕方ない。レンに笑われねーかなとか思ってやっとこんなこと話したら笑われるかもしんねーって気付いた。
「それは難しい質問だね。」
 不安を裏切ってレンは神妙そうに言って顎に手を当てる。
「一概にタイミングなんてないけど、敢えて言うならお互いのフィーリング、かな。」
 いつになく真剣な声音でレンが言う。フィーリング…か。まぁそりゃ気持ちがなけりゃそんなこと出来ないだろうしな。
「たまにボディタッチなんかでアピールしてくるレディがいるけど、おチビちゃんがアピールすればシノミーもまんざらじゃないだろうさ。」
「ア、アピールって!そんな恥ずかしいことできるか!」「ならシノミーに全部任せるかい?おチビちゃんがその気だってことくらいは伝えた方がいいんじゃないかい?見つめて、腰に腕を回して、キスをするだけでも十分。」
「う…、まぁそうだけど。」
「まぁ全てはフィーリングだからね。その場の流れでベッドインも有り得るだろ。」
 ベッドインってすげー大人な響きだ。同じクラスでもやっぱりレンは年上で大人っぽい。那月も年上だけどあいつは世話のかかる子供みたいだ。
「愛と性欲はイコールじゃないが愛の先に性欲があるのは確かさ。健闘を祈るよ、おチビちゃん。」

 那月はいつもの下校時間より1時間遅く帰ってきた。帰ってくるなり思い切り抱きしめられて死ぬかと思った(怪我的な意味で)けどそのあと俺が怒って突き飛ばしちまって一回目のチャンスは失敗。夕飯を作ってたら背後からキスをされて二回目のチャンスがやってきたけどいきなり見つめたりとか恥ずかしいことができるワケもなく失敗。三回目は就寝前にやってきた。
「翔ちゃん、おやすみのキスをしていいですか?」
 でかい図体には似合わないピヨちゃんのパジャマを纏った那月が言った。いつもは勝手にするくせになんでワザワザ聞くんだよと思ったけど頷いて那月と向き合う。那月の手が頬に触れて暖かい。上唇をまず吸われてそれから下唇と下唇が重なった。心臓が破けそうに音を立てる。
「翔ちゃん。」
「ん…那月…。」
 唇がくっついたまま聞こえる甘い声。溶けて死にそう。那月のシャツの裾を掴んでいた手をぎゅっと那月の腰に回す。めちゃくちゃ顔が熱くて頭がぐらぐらするけど那月の瞳をまっすぐ見上げた。渾身の勇気を振り絞って俺から那月にキスをする。那月みたいに上手く出来なくて唇同士がぶつかっただけになった。
「那月…。」
 甘い言葉の一つでも言えりゃいいんだけどそこまではできなくて名前だけ呼ぶ。そしたら那月に強く抱きしめられて開いた唇に唇が食べられた。そのままベッドに倒れ込んで那月を見上げながら背中に腕を回したらまたキスが降ってきた。舌先が唇を割って歯をなぞる。浅く唇を開いて舌同士が触れたら背中が浮くみたいに痺れた。那月がいつもより熱い気がする。絡む舌の熱がざりざりと音を立てて那月の唾液が口の中に溜まる。優しい手に前髪を上げられてそのまま頬から首筋まで手が伸びて胸を撫でた。ドキドキがそのまま伝わってしまいそうで怖い。喉を鳴らして唾液を飲み込んで那月の舌を舐め返す。そうしたら那月に舌を吸われて呼吸ができなくなった頭がびりびり痺れる。心臓が爆発しそうで痛い。
 これがタイミングなのかもしれない。那月だっていつもより長いキスをするしレンの言うフィーリング?か。唇と舌で触れ合う間に熱が増幅して体が焼けてしまいそう。ああ、つか勃ちそう…。腰から触れて足が交互に重なって、那月にもバレてんだろうなって思ったら恥ずかしいけど、本当はもう少し那月に触ってみたいし触られたい。那月の背中を撫でて腰に手が届いた時に那月の唇が離れる。見上げたら赤い顔の那月が笑ってて。
「おやすみなさい。翔ちゃん。」
 那月は甘い声で就寝の挨拶をしてさっさと自分のベッドに入った。……ああ、おやすみ…って、えぇぇ!?今の流れで!?いや、おかしいだろ!今のはそんな感じで終わる所じゃないだろ!?
「な、那月!」
 いやいやいやいや俺頑張ってたよな?萎えた?考えがまとまらないまま立ち上がって那月のベッドまで駆け寄る。那月は布団から顔を出して呑気にどうかしました?なんて笑ってる。
「その…一緒に寝ないか?」
 恥ずかしい。ものすごく恥ずかしいけど、俺は今日すごく頑張ってると思う。だって俺も那月も男だし、ちょっとでもいいから気持ちを確かめたいんだ。
「どうしたんですか、翔ちゃん。」
 甘い声を漂わせて那月はいつもみたいに微笑んで俺の頭を撫でる。
「さ、さっきの…」
「さっき?」
「………続き…したい…。」
 今日の俺はすごく頑張ってると思う(二回目)だってこんなに積極的な那月がひと月の間、一度もそんな気があるように見せないから、不安なんだ。やっぱり俺のことはピヨちゃんと同じなんじゃないかって。
「ダメですよぉ。興味があるのはわかりますけど、翔ちゃんはまだ小さいんですから。」
「は?」
「ふふ、嬉しいなぁ…さっき翔ちゃんが積極的だなぁと思ったらそんなことを考えていたんですね。そうですね、翔ちゃんがエッチな本を買える年齢になったらしましょうねぇ。」
 那月はにこにこ笑って俺の髪型をぐしゃぐしゃにしてから布団に潜った。すぐにすやすやと寝息が聞こえて那月は眠ってしまった。
 ってぇぇぇぇ!?ちょっと待って!待てよ那月コノヤロウ!そりゃ確かに俺は年下だけど、いや正論だけどさ!けどその付き合ってるし男だしそういうことは絶対考えちゃうし、ダメってことはなにもないだろ!えぇぇぇぇ!?

111010
続編「恋はこわがり
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