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 私は気付いてしまった。この力を、聖遺物の化け物じみた力をイオンに使えば、彼の病を取り除くことが出来るのではないか……と。聖遺物を手にしたものは肉体の成長、退化が止まる。同じ聖遺物の使徒との戦いで敗れない限り、もしくは自壊衝動に駆られない限り、身体を壊すことはおろか死ぬことさえなくなるのだ。私がこの聖遺物を扱えるのはあの騎士団の団員たちとは違って偶然の賜物であるが、それでも聖遺物は聖遺物。この世界でもこれを呼び出してしまった以上、私は半永久的に同じ姿のまま孤独に生き永らえるより他なくなった。この力をイオンと共に使うとしたら、きっとイオンは助かる。預言などという馬鹿げた戯言に従うことなく、生きることが出来る。しかし……同時に、自壊衝動が訪れるまで年を取ることも死ぬことも、出来なくなってしまうのだ。私一人なら良い。この世界に黒円卓の化け物たちはいないのだから、なんの心おきもなくこの力をイオンのために使うことが出来る。けれどイオンにも同じことを強いるなんて、出来ない。病の克服と同時に彼は、新
たな呪いを抱えてしまうことになるのだ。
「イオンは……」
 私と共に、永い時を生きてくれますか?
 永いとは言えど百年かそこらで恐らく自壊衝動は訪れる。しかし姿形はずっと今のままだ。ある程度意のままに身体を操ることが可能とは言え、やはりそればかりは抗いようの無い事実だった。
「君が考えていることは全て杞憂であると、言っておくよ」
「ですがイオン、仮に聖遺物を私たち二人で共有することが可能であったとして、私たちはこの世界で二人きり、進まない時を歩み続けなくてはなりません。あなたにまでそれを強いるなんて、ましてや私なんかと……」
「君だからだよ。君だから僕は受け入れるんだ。どんな呪いだって、僕は君となら幾らでも身に受けよう。身体が治ることなんて、正直二の次なんだ。ただ、君を未来永劫僕に縛り付けておく手段が、欲しかった」
「イオン……」
 私も、私だって、あなたを縛る鎖が欲しいと、心のどこかで思っていた。けれどイオンにはイオンの心があって、それは決して私が踏み荒らして良いものではないから、私はそれを考えないようにしていたのだ。なのに、彼は……私を受け入れてくれると、言う。
「後悔、しませんか」
「僕は君しか愛せないよ。愛しい君の言葉なら、それは全て真実だ」
 そうして彼は私を優しく抱き締めて、私は彼の腕の中で姫鶴一文字を握り締めた。無数の刀身の半数を、彼に受け渡そう。私の獲ていた魂の半数を、彼に捧げよう。彼と私は一心同体、これからずっと、未来永劫、生まれ変わっても一緒だから。


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