23日は

 何度首を横に振っても一向に納得してくださる様子の無い晴継様に、私はほとほと困り果てていた。正直彼の申し出を断るのは心苦しいのだけれど、こればかりは私も身の程を弁えている。

「なに、簡単な話じゃないか」
「ですから、軽食であれば城田さんが作ってくださいますと、私は……」
「君の手料理が良いと俺は言っているんだ。作れないわけでは無いのだろう?」

 美しく微笑む晴継様はとても楽しそうなご様子でいらっしゃる。対して私は、もう断るための文句を使い果たしてしまい頭を抱えるばかりであった。確かに人並みに料理は出来るつもりだけれど、この家には城田さんという類い稀な才能を持つお抱え料理人がいるのだ。凡才しか持たない私の料理など、とても晴継様に満足していただける品であるとは思えない。

「こんなことで俺に命令だなどという言葉を使わせないでくれ」
「そう仰られましても……」
「俺から君へ、直々のお願いだ。友人からの言葉だと思って気楽に捉えてくれたら良い」
「……」

 私は内心溜め息を吐くと、腹を括って晴継様の御表情を窺う。彼はやはり微笑を浮かべるばかりであり、そこから滲み出る有無を言わせぬ圧迫感は私に頷く以外の選択肢を与えなかった。

「……あまり、ご期待はしないでくださいませ」
「ありがとう、嬉しいよ」

 しかし晴継様のそのお言葉をいただけるだけで使用人として、そして彼に惹かれている人間の一人として歓喜の気持ちを抑えきれないのは、今更言うまでもないのである。




柿元兄だと思った?
残念、雪白兄でした!

2014/01/23 21:47



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