大学パロ(帝光大学大学院原澤ゼミ)



「先輩おはようございまーす!」

仮眠室のドアを勢いよく開け、仮設ベッドに横たわる白い塊をぺしんと叩く。先輩と呼ばれたそれは、低く唸りながらもぞもぞ動いたかと思えば再び活動を停止した。

「もー」

布団代わりに白衣を被り、なまえの直属の先輩である今吉は、時々恐ろしく自堕落になる。しかも弛みきった姿を見せるのは大体なまえの前だけで、他のメンバーの前では常に飄々としていた。直下の後輩である自分の前で気を張らないのは、多分良いことなのだろう。気の抜ける場所となるぐらいに信頼されているなら、なまえとしても嬉しい限りだ。しかし、眼下にあるのは起床を拒否するかのように寝返りをうつ丸まった背中。教授からの信頼も厚く、白衣を翻しながら颯爽と歩く今吉に尊敬してすらいるのに、こういう姿を見るとなんとも言えない気分になった。

「先輩っ!」

大声で起床を呼び掛けつつ、今度は遠慮もなく直接ゆっさゆさと揺さぶった。くしゃりと皺が寄った白衣ごと今吉の大柄な体が左右に揺れる。少しだけぐーで殴りたくなったが丁度よく今吉はのそのそと白衣の下から眠たそうな顔を覗かせた。細目を更に細くさせ、ごしごしと目を擦る。

「んー」
「おはようございます先輩」
「おはよーさんみょうじ……」

掠れ声で挨拶しながら、付けっぱなしだったイヤホンを耳から外した。寝ている間も装着していたイヤホンからは、携帯の目覚まし機能がガンガン鳴り響いていたのである。本来なら起きているはずなのだ。にもかかわず、今吉は先輩特権を発動させ、わざわざなまえに自分を起こすように命じた。つまり、みょうじが起こしに来るまでもー少し寝よか状態であり、なまえの存在はどちらかと言うと二度寝対策だった。

「眼鏡そこですよ」
「ん……」

正直、今吉の顔つきは極悪人のそれだとなまえは思う。人を食ったような笑みや、常に冷たく全く笑ってない目など、常々なまえは笑顔で人を殺しそうだと日々今吉を揶揄していた。しかし、眼鏡は少しそれを隠してくれる。裸眼のときは今吉のいかにも悪どそうな容姿がありのまま見えるため、なまえはいつも眼鏡の大切さを確認していた。

「自分、なんか失礼なこと考えてへんか」
「いやぁ眼鏡似合ってるなぁって」
「お前ワシの裸眼見ていっつも輩や言うて笑てるもんな」
「だってインテリヤクザにしか見えない」
「うっさいわボケ」

完璧に目が覚めたのか、
布団代わりにしていた白衣を丸めて小脇に抱え、寝癖のついた髪の毛をぐしゃくしゃと掻いた。そして起こしに来たなまえより先に立ち上がり、ぶっきらぼうに呟いた。

「そんなんやから寝起きも裸眼もお前にしか見せられへんねん」
「でしょーねー」

そう即答したなまえに、今吉が顔目掛けて白衣を投げつけたのは言うまでもない。

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