昼休みになった。南沢は朝、倉間に言ったように二年*組に足を運んだ。
車田には「やめとけ」なんて言われていたが南沢は無視してきた。なぜなら南沢自身の恋だから車田に言われる筋合いはないと思ったから。
*組のドアから顔を覗かせた瞬間、*組から朝のような黄色い声が飛びかった。南沢はいつもの営業スマイル(?)でキレイにスルーした。
南沢は*組を見渡した。だが、お目当ての瀬戸はいなかった。南沢は*組で昼飯を食べていた倉間と速水と浜野に瀬戸がどこに行ったのか聞いた。
「てか、本当に来ましたね」
「来ちゃ悪いかよ、それより倉間、瀬戸は?」
「なんか三年生の男子に屋上にこいみたいなこと言われて、呼び出されてましたよ」
「は?」
南沢は凍りついた。自分以外にも瀬戸を狙っていた奴がいることに。でも、後から瀬戸がモテることを思い出した。南沢は倉間にお礼を言って*組を出ていった。
「ちゅーか、なんで南沢先輩は瀬戸のこと聞いてんの?」
「南沢さんは瀬戸が好きなんだと」
「えぇ!?」
浜野と速水は*組に響き渡るような大きな声を出した。それもそのはず、南沢があの喧嘩番長瀬戸を好きだなんて誰しも驚く。浜野は驚きのあまり口にくわえていた焼きそばパンを机に落としてしまった。
「そんな驚くなよ。浜野、パン拾え」
「いや、驚くよ。速水も驚いたよな?」
「はい、まさかあの南沢先輩が瀬戸さんを…」
沈黙になってしまった。浜野はいいこと思い付いた!みたいな顔をし、しゃべった。
「ねぇねぇ賭けしてみない?南沢先輩がフラれるか、フラれないでラブラブになるか!ついでに俺はフラれるに賭ける」
「浜野くんひどい」
「じゃあ速水はどっちなの?」
「僕は…フラれるに…」
「なんだ速水もかよ!なぁ、倉間は?」
「俺はフラれないに」
「えー!倉間お前、熱あるんじゃね?」
「熱なんてない。それより、何を賭けるんだよ」
「焼きそばパン!」
「それ得するやつ浜野だけだろ」
倉間と速水は飽き飽きしていた。
「じゃあ、購買のプリンで!」
「まぁ、それなら」
「じゃあ決まり!」
そのころ南沢は屋上にいく階段を登っていた。
すると屋上から声が聞こえてきた。南沢は走って階段をかけ上がり、屋上へでた。そこには数人の男子が瀬戸が動けないようにおさまえていた。数人の男子というのは昨日河川敷にいた男子達だった。
「昨日はよくもやってくれたな瀬戸」
「だまれカス!」
「お前、この状況が把握できてないみたいだな?」
するとリーダーらしき男がポケットからボールを取り出した。そのボールは野球ボールだった。瀬戸はゾッとしたのだろう、顔がどんどん青ざめていった。瀬戸が青ざめた理由のはボールが野球ボールだったから。野球ボールが頑丈にできていて、とても固い。瀬戸はそのことを知っていた。
「今から昨日していた遊びと同じことしてやるよ。あぁそうだ、顔に当たったら50点にするか」
そう言い、男は笑いながら少し離れボールを瀬戸に投げようとした。瀬戸は目をぎゅつとつぶった。
「ぐぁっ!!」
男の声がした、なにかに強く当たったような声が。
瀬戸が目を開けると瀬戸にはスローモーションで、怒りに満ちたような顔の南沢が男の頬を右手で一発殴っているのが見えた。
南沢は知らず知らずのうちに男に手を出していたのである。男は地面に倒れた。
「いてて、何すんだよ!」
「男数人で女一人とかおかしくね」
「う、うるせ!邪魔するな!」
南沢は男の胸ぐらを掴みいつも以上に低い声で言った。
「もう一発殴られたいのかよ」
その言葉で男は南沢を振りはらって逃げていった。男につられて瀬戸をおさえていた男子達も逃げていった。
瀬戸はその場にしゃがみこみ顔を隠した。南沢は心配そうに瀬戸に近寄った。
「来るな!」
瀬戸の発言に南沢は動揺しなかった。瀬戸の今、はっした言葉よりも瀬戸が怪我していないかの方が最優先で瀬戸の発言など聞いていなかったから。
「怪我してないか?」
「し、してない」
「変なことは?」
「されるわけないだろ!」
「…よかった」
南沢は安心したらしく息を漏らした。
「…あのさ」
「ん」
「助けてくれて、あ、ありがと」
瀬戸は照れ臭そうに目線を下にして言った。それにつられて南沢も照れてしまった。外からみたら初々しいカップルのように見えた。






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