花火さんより


「隆ちゃんの馬鹿!!」
朝早くから皇マキの怒声がおひさま園中に響き渡った。
そのマキの怒声を受けた瀬方隆一郎も負けじと言い返していた。
「言っとくけどな、俺はマキよりかは馬鹿じゃない。むしろ、馬鹿なのはお前だろうが」
「マキは隆ちゃんよりかは馬鹿じゃないもん!!」
「そうやってすぐに言い返す所が馬鹿なんだよ」
「隆ちゃんなんて大っ嫌い!!」
「俺なんて嫌いだよ!!」
口論が終わったと同時にマキは泣きそうな表情で瀬方の前から立ち去った。
瀬方は立ち去ったマキを見てからガシガシと頭を掻いた。
今の口論でおひさま園の仲間達を起こしてしまったかもしれない。
そう思って深い溜め息をつく瀬方は右手で隠し持っていた白い小さな包みに視線を移す。
今日はホワイトデー。
この包みは先月のバレンタインの時にマキからチョコを貰ったためのお返しである。
瀬方は仲間達に冷やかされる前にマキに渡そうと思いマキの部屋へと向かった。
その際に風子と鉢合わせをしたために少しだけ話をしていた。
そう、口論の原因はこれだった。
朝から瀬方に部屋から出るように言われたマキはそれを見て不機嫌になったのだ。
そこからは瀬方自身も何を言っているのか分からないぐらいのすさまじい口論となった。
「朝からすごいわね」
その様子を遠巻きに見ていた風子が苦笑いを浮かべて瀬方に声をかけた。
「悪いな。何か口論に巻き込んじまって」
「別にいいわよ。けど、どうしてマキが怒ったのか分かってる?」
「まぁ、なんとなく…」
「隆一郎が私と話してて嫉妬しちゃったのよ。マキは誰よりも隆一郎の事が好きだから」
風子に言われて瀬方は罰の悪そうな表情を浮かべた。
マキが自分に対して恋心を抱いているのは自分から見ても第三者から見ても分かりきっている。
毎日のように愛情表現をするマキの気持ちは瀬方にはしっかりと伝わっている。
だが、瀬方はそういうのには鈍いうえに不器用な性格だ。
自分とは違い素直に愛情表現を見せるマキを何処かで羨ましいと思う反面で愛おしいと思えた。
気が付いたら瀬方の足は自然とマキを追っていた。
マキは庭の中をとぼとぼと歩いていた。
「マキ!!」
名前を呼ぶと瀬方に気付いたマキはビクリと肩を上げた。
「隆ちゃん…」
「不細工な面がもっと不細工になってるぞ」
「マキ、不細工じゃないもん!!」
「おー、怖い怖い」
「…何しに来たの?」
「お前を追いかけに来たんだよ。誰かさんが風子とただ話してただけなのに怒って逃げるからな」
「あれは隆ちゃんが呼び出しといてマキを放置してたのが悪い!!」
「はいはい。おかげで渡しそびれたらどうしようかと思ったぜ」
そう言って瀬方はマキに白い小さな包みを渡す。
「何これ?」
「バレンタインのお返し。マキにしては上手かったから一応三倍返しな」
「一言多い!!開けていい?」
「どうぞ」
そう言って白い包みを開けたマキは思わず目を見開いた。
そこにはマキが以前から欲しがってたペンダントが入っていた。
「隆ちゃん、これ…」
「さて、俺はもう一眠りするか。起きてたら何か怒られそうだし」
そう言って瀬方はおひさま園に戻って行く。
マキは貰ったペンダントをいそいでつけると、先に歩いている瀬方の背中に思い切り抱き付いた。

そんな君が世界で一番大好き

(皮肉やで不器用だけど本当は優しい君を嫌いになれる訳がないじゃない!!)




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