負けず嫌い


今、私は剣城と手を繋いでいる。なぜ、手を繋いでいるというと王様ゲームで霧野先輩に命令されたからである。
本当は天馬と手を繋ぐことになってたけど剣城が天馬の番号をすり替えたのだ。剣城曰く、天馬は馬鹿だから気づかないと言っていた。それにはすごく納得できた。
外靴に履き替えて二人で合宿所を出た。合宿所の玄関を出た時間は夜の9時だった。この時間は私が家で嫌いな課題に取り組んでいる時間だ。私は憂鬱なこてを思い出したな…と思い上を見上げた。
「わぁ」
そこにはとても綺麗な夜空があった。その綺麗な夜空にはダイヤモンドを散らばしたような星が輝いていた。
「剣城!剣城!上見て!」
「…すげ」
「私、こんな綺麗な夜空見たの初めて」
「東京じゃ周りが明るすぎて見れないからな」
私と剣城は少しの時間その夜空に見とれていた。私はずっと綺麗!綺麗!と連発していた。
私が夜空を見て綺麗と言うたびに剣城は優しく微笑んでくれた。
恋愛映画だとこういうシーンは男の人が女の人に「君の方が綺麗だよ」とか言うだろう。もし、この言葉を剣城がいったら大変なことになるだろう。
もう、何ヵ月も剣城といるがこんな甘い言葉は聞いた事がない。でも、今日の温泉に入った時みたいに優しく言葉はよく言ってくれる。剣城は本当はとても優しい。剣城はそんな優しい言葉を言った後にたまにデレることがある。
デレると言うより甘える?て言うべきなのかな?
前に剣城の家で遊んだときにそのデレがあった。私が剣城に天馬の話をしていたときだった。天馬の話をしている最中に剣城が私の名前を呼んだ。それで、剣城はこう言った。
“あんま天馬、天馬言うな。し、嫉妬する、バカ”
剣城の口から嫉妬するなんて言葉がでるなんて、空いた口がふさがらなかった。そうしていたら剣城が私の手を握ってそっぽを向いた。
わたしは今でもこのことは忘れてない。初めて剣城がデレた日だから。

しばらく歩いていたら、小さな川にでた。
「ねぇねぇ、こんな川て河童とか出るかな?」
「出ない。てか、いないだろ河童なんて」
「えーいるよ、イナズマジャパンのヒロトさんが河童いるて言ってたもん」
そんな河童が出るだの、出ないだの話していたときだった。
剣城が目を鋭くして川の奥を見始めた。
川の奥は林が広がっていた。
剣城はさっきの鋭い目じゃなく穏やかな目になって言った。
「葵、林の奥見てみろ」
「え?」
私は言われたままに林の奥をみた。小さな光が飛んでいた。
「もしかして蛍?」
「あぁ」
その小さな光はさっきの夜空の星と同じくらい綺麗だった。
「わたし蛍初めて見た!」
「静かにしろ、あんま大きな声だすな。逃げんだろ」
「ご、ごめん」
私は初めての蛍に見とれていた。剣城の話だと、蛍は自分放った光で自分と将来一緒にいる相手を探しているらしい。私は光だけで相手を探すなんてすごいなて思った。
「蛍て大変だね」
「なんで?」
「だって光だけで相手を探すんだよ?私が蛍だったら絶対無理だよ」
「おしゃべりだしな」
「もう!」
「それに比べて俺たち人間はしゃべれるしいいよな、あと…」
剣城は手を繋いでいない方の手で私の頬にふれた。
「触れられるし」
「うん」
そう言って、剣城の顔が私の顔に近づいてきた。
私は驚いて剣城から離れてしまった。
「すまない…」
「あのさ、もしかしてキスしようとした?」
剣城は何も言わなかった。剣城が何も言わないときは当たっているということだ。
私はまだキスをしたことがない。結構剣城と一緒にいるがまだキスまではいっていない。せいぜい手を繋ぐまでしか。剣城は申し訳なさそうな顔をしていた。
「ごめんね剣城、私、キスしたことなくて…」
私は正直に言った。
剣城はため息をつき口を開いたら。
「俺もしたことねぇよ」
「え、本当?」
「なんで嘘つかなきゃいけないんだ?」
「そうだよね。でも、ごめんね」
「いい、大丈夫」
剣城はまたため息をつき、蛍の方を見た。
私だって本当は剣城とキスしたい。さっきのはただ驚いてしまっただけ。
私は蛍を見ている横顔の剣城に初めてだけどキスをした。唇に触れるだけのキス。
「…これで良ければ、いつでもするよ」
「…」
「剣城?」
剣城の顔が正面に見えるように移動した。剣城の顔は真っ赤だった。
「…つ、剣城?大丈夫?」
「お前まじ反則」
剣城はその場に座りこんでしまった。剣城がこんなにも照れるなんて初めてだった。今日は初めてなことが多すぎる。
少したって、剣城が立ち上がった。
「お前さ、さっきみたいなこと他でするなよ」
「剣城以外にするわけないよ」そう言って私は恥ずかしくなり下を見た。
「葵」
「なに?」
私は名前を呼ばれたので剣城を見た。そしたら柔らかなものが唇に当たった。
「お返しだ」


私はそんな負けず嫌いな剣城が大好きです。


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