心、感じとれました


あたしはいつもの場所に着いた。いつも場所とはこの小さい公園のこと。ブランコと滑り台しかない、本当に小さな公園。だけど、あたしにとっては大切な思い出の公園、南沢と初めてキスした場所。初めてのキスはあたしが久々の公園ではしゃいでブランコに座ったときに唇に柔らかいものが当たった。ほんの一瞬、暖かい熱を持ちながら。南沢はキスをしたあと、あたしに「お前、ほんとかわいすぎ」と言った。そのときのあたしは多分、赤面だったと思う。
それから、南沢とはよくキスするようになった。ほとんどは南沢からキスを要求するが寂しくなったり、心細いときとかはあたしから南沢に唇と唇をくっ付けた。
あたしは公園の片方のブランコに座った。ここに座るとまた目から水が一粒出てきた、またあたしは袖で水を拭いた。南沢にメールして10分、南沢はこない。雷門中からこの公園までは約50分、走って約25分。計算からして南沢はまだこない。あたしは上を向きため息を突いた、そしたら白い息がでた。白い息、あたしは寒いと今実感した。南沢のことで頭がいっぱいだったから。あたしは白い息を見て
「あたしの残った傷もこの白い息みたいに消えてなくなればいいのにな」
「お前の傷、全部、癒してや、る」
低くて、通る、あたしの好きな声。あたしはゆっくりと首を下におろした。そこには息を切らして立っている南沢がいた。まだ15分しかたっていないのに。
「みな…みさわ?」
「当た、り前だろバーカ」
「来るの早くないか?」
「あ、あぁ、雷門から走って来た、からな」
本当に走って来たらしくしゃべるのもやっとだった。南沢は2つあるブランコの一つに座り、息を整え、あたしにしゃべった。
「水鳥は俺と本当に別れたいのか?」南沢が珍しく恐る恐る聞いてきた。
いいえ、あたしは別れたくない。だけど、苦しいのは嫌だ、この苦しみから抜け出したい。怖い、苦しい、この2つから抜け出したい。
別れたくない思いと怖くて、苦しい思いとが被さりあう。
「俺は別れたくない」
あたしだって別れたくないけど、怖くて苦しいんだよ。
「…キス、の件はごめん」
「な、なんでキスしたんだよ」
南沢はやっぱりかと言って地面を見て口を開いた。
「キスした女子に水鳥に何かしちゃうかもて言われたんだよ」
「何かてなんだよ」
「っ、だから暴力とかいじめとかに決まってるだろ!」
その声は公園に響いた。あたしは驚いた、あの冷静な南沢がいきなり地面を相手に怒鳴ったから。本当は地面が相手じゃなくてあたしが相手なのに。また、南沢の優しいとこがでた。
「暴力なんて、あたしの鉄拳を使えば!」
あたしもつい怒鳴ってしまった。次はあたしの声が公園に響く。そしていきなり南沢に両手首を掴まれた。
「どうだ?俺の手ほどいてみろよ」
あたしは何度も南沢に掴まれた腕をほどこうとしたがびくともしなかった。
「びくともしないだろ?」
「っち、」あたしは悔しかった、自分は誰よりも強いと思っていたから。あたしは腕をほどこうとするのを諦めた。
「女子だって3、4人で水鳥に向かっていったら水鳥は必ず負ける!」
「あたしは負けない!」
「どうしてわかんねーんだよ!こんなにも水鳥を、お前を守りたいのに!」
その言葉はあたしの心に響いた。守るなんて言葉いままで誰にも言われた事がなかった、だいたいはあたしが守る側だったから。
「俺はあんとき、女子とキスした後思ったんだよ。キスしなければ良かったて、何かその女子に水鳥がされたら俺がお前を守ってやればいいて!」
南沢は言いたい事を言ったようで脱力になり、目から水を流した。泣くまであたしの事を考えてくれていたと思うと嬉しくて、あたしも目から水を流していた。
「はは、涙とまらねーや」
「…ねぇ、あたしやっぱり南沢と別れない」
「本当?」
「本当」
ガバッと南沢に抱きしめられた。久々のこの感覚、あたしは南沢抱きしめられるのはあまり好きじゃなかったけど、今は好き。こんなに近い距離で南沢を感じれるから。
「ごめん。こんな思いさせちまって」
「もういいよ、大丈夫」
「あんさ、…キスしないか?」
「うん」
あたしと南沢は「好き」と気持ちを現しながらキスをした。最初は軽くリップ音をたてて、次に深く絡むように。南沢はあたしの腰に手を置いた、あたしが離れないようにギュとあたしを引き寄せる。あたしも引き寄せるように南沢の頭に腕をまわした。
長いキスが終わり時間を見たら8時だった。あたしが家を出たのが7時半くらいだった。そろそろ家に帰らないといけないが、南沢はあたしを離してくれなかった。
「み、南沢。そろそろ帰らないか?」
「だめ、ずっとこうしてる」「な!バカ!明日が土曜だからって調子のるな!部活行け、部活!」
「残念、土曜は部活が休みです」
南沢は嬉しそうに水鳥を見つめた。あたしは舌打ちをしたが、本当は嬉しかった。南沢とまだこうして近くにいられるのが。
「これから、またこんな事があるかもしれないけど俺と居てくれないか?」
「…もう、こんな事ないようにしろよな」
「ああ、絶対」
「うん」
あたしと南沢は柄じゃないけど指切りをした。この指切りは一生守られればいいなとあたしはおもった。
「水鳥だってこんな事するなよ」
「しねーよ、あたしは南沢と一緒にいるだけで幸せ!」
柄じゃないことを初めて言ったので少しはずかしかたった、南沢は片手で顔を隠した。顔は見れなかったが、耳は真っ赤だった。
「女々しいー」
「お前が男々しいだけだ」
「一生守ってやるから」
ずっとこうして居たかった。
南沢の心、感じとれた。



(あたしのパートナー、)




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終わりました…力つきました…南水やば…









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