中編 | ナノ

05

ドカアッ!!


「うぐっ!!」

「大丈夫翔ちゃん!?」


腹の上にいきなりの衝撃と重み。
俺は目を開けた。


「…那月」

「大声出してどうしたの?具合悪い?大丈夫?」

「ゆ、め…」


すごく不吉な夢…。

俺は頬に伝ってきた冷や汗をぬぐってベッドから降りた。


「怖い夢でも見たの?」

「…ああ、大事なやつが…しんじまう夢」

「それはいやですねぇ…」

『こわいよねぇ』


バッ!!

俺は那月じゃない、女の、夢の中で聞いた声のした方に振り向いた。


「なっ…おま…」


そこには、今まで夢の中で会っていた名前の姿が―


…つーことはあれか?あれは夢でなくて、本当にあった出来事で…―


『翔くんに会ったから成仏できると思ったんだけど、
なんかね、成仏できなかったからついてきちゃった』

「僕たちの部屋の前でうろうろしてたんですよぉ〜」

「はぁ!?てか、那月!お前も見えるのかよ!!」

「はい、見えますよぉ」

『もうちょっとの間だけ、よろしくね、翔くん』


そう言って、彼女は笑った。


「どうなってんだよぉおおぉおおおぉおぉ!!!」






もう二度と会えないと思っていたやつが、また俺の前に現れた。

そして、もうしばらくここに、俺のそばにいると。

俺は心の中であの時の涙を返せと言った。




end


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