中編 | ナノ

04

俺との約束を思い出して、先週の今日、日曜日に、
この公園の近くに用事があって、その帰り道に寄ろうと
あそこの通りを歩いていたら、トラックが突っ込んできたらしい。


『居眠り運転だったんだって。
トラックの運転手は今も意識不明の重体』

「なんで…お前だけ死ななきゃならなかったんだよっ!!」


俺は名前に怒鳴りつけた。

こいつに言ったって、八つ当たりしたって、もうこいつは死んでるのに―

そこでふと気がついた。


「でも、何でお前ここに…」

『だって、翔くんと約束してたから』


名前は俺の目を見て言った。

まっすぐな瞳、吸い込まれそう…。


『私、今日をずっとずっと楽しみにしてて…
なのに、事故で死んじゃって…』

「っ…」


名前がなんともいえない表情で、俯いた。


『翔くんに言いたいことあったのに、言えなくなっちゃった』

「な、なんだよ!?言えよ!」


名前は首を横に振る


「な、なんでだよ!?」

『幽霊の私じゃいえない』


名前は俺に背を向けた。


「おい!」

『…消える前に、翔くんに会えて嬉しかったよ』


やめろよ、そんな冗談。

いくな…いくな、いくないくないくな!!!


俺は名前を抱きしめようと手を伸ばした。


けれど、その手は空を切っただけで―


「っ…名前ー!!」



俺の叫び声はそこら中に響き渡った。

涙でぼやける視界の中、あいつも泣きながらこっちを見て手を振っていた気がした。




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