記憶の中の君と、目の前にいる少年と


目の前にいる彼の瞳が、
スカイブルーの瞳が、私を捉えて放さない。

名前は少年を見たまま固まった。

…いや、動けなかった。


「あの…」

『…あ!ご、めんなさい…はい、帽子…』


…そうだよね、もう、五年も前の話だし…。

…翔くん…もう一度、君の声で
私の名前を呼んで欲しかったな…。


「あの、さ…」

『そ、それじゃあ!!』

「あっ!おいっ!!」


私はそれ以上そこにいるのが辛くなって、何かを
言っている翔くんに背を向けて体育館まで走った。


―体育館―

『はっ、はぁっ…はぁっ…』


は、走っちゃった…。

名前は息を切らしながら
自分の並ぶところに整列した。


ドクッ…ドクンッ…


はっ…どう、し、よ…発作が…

名前はその場にしゃがみ込んだ。


「大丈夫かい?レディ」

『はぁっ…だ、れ…?』


名前が顔を上げると、そこには
オレンジ色に近い茶髪の長髪の男が、
名前の顔を覗き込むように見ていた。


「顔色がよくありませんね…貧血ですか?」

『ち、がい、ま、す…』


そこにもう一人黒髪の人が
名前の顔を見て眉をしかめていた。



あ…も、う…駄目…―



「―…名前!!」




―意識が途切れる直前、翔くんが私の名前を呼んだ気がした―





―――――――――――………………





『う…』


名前は目を覚ました。


『ここ…は…?』


サラッ

名前が手を動かすと手に何かが触れた。


『え…?』


名前の寝ているベッドに頭を乗せて
すやすやと寝ている金髪の少年…



…翔、くん…


「ん…」

『あ、の…』


翔は目を覚まして名前のことを
ぼーっとした目で見た。

…まだ目がはっきりと
覚めていないみたい…。


ガタッ!!


翔は勢いよく立ち上がり、
名前を抱きしめた。


『ひぇ…!?』

な、ななな何々!?

名前はいきなりのことに驚いて、
翔の腕の中で固まったまま動けなかった。

…?翔くん、手が震えて…

名前は自分を抱きしめている
翔の腕が震えていることに気がついた。


「ばかっ…!」

『…え?』

「ばかやろ…しんぞ、止まるかと思っただろ…」

『ごめ、んなさい…』


名前はわけがわからないまま翔に謝った。


「五年前いきなりいなくなりやがって…
ずっと…ずっと探してたんだぞ!!」


―えっ…?



保健室の窓から、心地のいい春の風が桜をのせて流れてきた。



今、目の前にいる君は、前とは違って―




続く




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