春の荷造り
![](//img.mobilerz.net/sozai/1645.gif)
『…懐かしい夢見たな…』
私は寝てる間にぼさぼさになった髪の毛に指を絡ませる。
案の定、指は途中で髪に絡まって、最後までいかなかった。
「名前ー!早く起きなさーい!」
『はーい』
お母さんに呼ばれて私は支度をして居間に向かった。
―居間―
ガチャッ
『おはよう』
「おはよう 朝ごはんできてるわよ」
『はーい』
「今日は部屋の荷物をダンボールに詰める作業をするんだから、
早くに起きなきゃって言ってたでしょう!?」
『ごめんなさーい』
「まったく…よくあんたが早乙女学園に合格できたね」
…それは言わないで、お母さん。
私はこの春から有名なアイドルを育てる学校、早乙女学園の生徒になる。
クラスはなんと一番ランクの高いSクラス。
それも作曲家コースの中でダントツのトップなんだって。
小さい頃から曲を作るのが好きで、いつか作曲家になりたいなって
思ってたから、すごく嬉しかった。
『ごちそうさまでした』
「食べ終わったら早く荷物まとめちゃいなさい」
『はーい』
間延びした返事をして私は自分の部屋に向かった。
早乙女学園は全寮制。生徒はみんな学園の敷地内にある寮に住まなきゃならない。
私がしている荷造りは、つまり、そういうこと。
ガタンッ
『あっ!いっけな……この写真…』
名前の肘が当たって写真たてが床に落ちた。
そこに写っていたのは、幼い頃の名前と、金髪の男の子。
『…翔くん…』
写真の中の彼にそっと触れて、涙をこぼした。
今も、昔も、思い続けた彼は、今は私の隣にはいない―
続く
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