春の荷造り


『…懐かしい夢見たな…』


私は寝てる間にぼさぼさになった髪の毛に指を絡ませる。
案の定、指は途中で髪に絡まって、最後までいかなかった。


「名前ー!早く起きなさーい!」

『はーい』


お母さんに呼ばれて私は支度をして居間に向かった。


―居間―


ガチャッ


『おはよう』

「おはよう 朝ごはんできてるわよ」

『はーい』

「今日は部屋の荷物をダンボールに詰める作業をするんだから、
早くに起きなきゃって言ってたでしょう!?」

『ごめんなさーい』

「まったく…よくあんたが早乙女学園に合格できたね」


…それは言わないで、お母さん。

私はこの春から有名なアイドルを育てる学校、早乙女学園の生徒になる。

クラスはなんと一番ランクの高いSクラス。
それも作曲家コースの中でダントツのトップなんだって。

小さい頃から曲を作るのが好きで、いつか作曲家になりたいなって
思ってたから、すごく嬉しかった。


『ごちそうさまでした』

「食べ終わったら早く荷物まとめちゃいなさい」

『はーい』


間延びした返事をして私は自分の部屋に向かった。

早乙女学園は全寮制。生徒はみんな学園の敷地内にある寮に住まなきゃならない。

私がしている荷造りは、つまり、そういうこと。


ガタンッ


『あっ!いっけな……この写真…』


名前の肘が当たって写真たてが床に落ちた。

そこに写っていたのは、幼い頃の名前と、金髪の男の子。


『…翔くん…』


写真の中の彼にそっと触れて、涙をこぼした。



今も、昔も、思い続けた彼は、今は私の隣にはいない―



続く





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