短編 | ナノ


  苦手な彼



私には、苦手な人がいる。

那月くんと双子のもう一人。

名前は―


『きゃあー!!』
「さっちゃん!名前ちゃんを
猫ちゃんみたく持たないであげてください!」
『な、那月くん助けて…!』

私は猫のように首をつかまれて宙吊りに
なっている状態で那月くんに助けを求める。

「おい」
『ひっ!な、何でしょう!?』

思わず叫んでしまった。

「那月に色目使うなこのクソチビが」
『使ってない使ってない』

私はぽいっと投げ捨てられて床にお尻を打った。

『いたっ!』
「シノミー、女の子はもっと丁重に扱わないと…」

私を投げた張本人、砂月くんと私の間に
神宮寺さんが入って私に手を貸してくれた。

『あ、ありがとうございます…』
「フン」

ふ、フンって…どうして私がこんな目に…。

涙目になってお尻を打ったところのスカートの埃を叩いた。


「さっちゃんどうして素直になれないんですか?
昨日だって名前ちゃんのこと楽しそうに
話していたじゃないですか…」
「なっ、なつっ」
『え?』
「"名前から話しかけてきた"って嬉しそうに…」
「那月!!」


確かに昨日は砂月くんに用事があったから
話をしに砂月くんのところに行った。
てか那月くん砂月くんの真似上手すぎ流石双子。

…でもどうしてそれが嬉しいの?

『那月くん、砂月くんは昨日
話しかけた時すごく不機嫌だったよ…?』
「恥ずかしいからですよぉ」「那月!」

砂月くんが那月くんの話を止めようとするけど、
流石双子なだけあって砂月くんがどうするのか
那月くんは行動が読めているようだ。

『はずかし、い…?』
「はい、さっちゃんは名前ちゃんのこと大好きですかふごっ「那月ッ!!」

砂月くんが那月くんの口を手で押さえた。

砂月くんが私のことを好き…?

『そ、そんなことない…よね…?』

私が砂月くんに同意を求めて砂月くんの顔を見る。
が、見事に反らされてしまった。

え、じゃあ…本当のことなの…?

「よく言うじゃないか。好きな子はいじめたいって」
「おいっ!!」

堪忍袋が切れたのか、砂月くんは
神宮寺さんに向かってグーで殴りかかって行った。

私は急いで砂月くんの腕を掴んで阻止する。

『や、やめて!暴力はいけないよ!』
「! は、放せ!!」

いつもは砂月くんからしてくることが
多いから私からのいきなりの行動に
砂月くんは動揺してるみたいだった。

…なんか、年相応の男の子みたいでかわいい…。

『喧嘩してもいいことないよ。
自分の手を傷めるだけだよ』

私はそういって砂月くんの手を
触ったら砂月くんがビクッとした。

『ね、やめよう?』
「ッ…」

砂月くんを見つめるけど
砂月くんはこっちを見てくれない。

「あ、さっちゃん耳まで赤くなってますよぉ」「ばっ…!!」
『あっ』

砂月くんは私の手を振り解いて
那月くんのところにいってしまった。


さっき手掴んだ時は振りほどかなかったのに…。

砂月くんに触れていたところが熱くなってきた。



苦手だと思っていた彼は、意外とヘタレだったみたいで―


私は苦手と意識していた彼を、苦手とは違う別の意識を持ち始めた。




end



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