短編 | ナノ


  天才少女と来栖くん



俺は最初、おっさんを恨んだ。

俺のパートナーの名前は苗字名前。
主席でこの早乙女学園に入ったやつ。

トキヤよりも頭がよくて、七海よりも作曲の才能がある。

世に言う"天才"ってやつだ。

そんなやつのパートナーになりたい
なんていうやつはごろごろといた。

そりゃそうだ。デビューするためにみんな必死なんだ。

パートナー決めの時、苗字をめぐって
クラスの中は火花が飛び散っている状態。

当の本人は興味がなさそうだった。
組みたいやつでもいるのかと思って聞こうとした時、
あのおっさんが現れて、「Ms.苗字のパートナーは
Mr.来栖に決定デ〜ス!!」とか言うから…。

『来栖くん』
「ん?あ、苗字」

今はもうみんな落ち着いて、こうして平和に曲を作ってる。

決まった時の批判がすごかったけど、
あとからこいつが言った言葉が相当効いたようだ。

「…なぁ、苗字」
『ん?』
「…あの時どうしてあんなこと言ったんだよ…?」
『えっ…と…』

俺はあの時のことが気になって苗字に聞いた。

「教えてくれよ?」
『あ、の…』

あ、泣きそう。目の縁に涙溜めてる。

こいつは見た目も中身も美人。性格悪くないし、かわいいし。

そんなやつがどうして俺を選んだのか―


『…一目惚れ』
「…は?」


ぼそっと、小さい声で、だけど、
俺には聞こえるように言った。

言葉の意味を理解するのに、十秒ほどかかった。
そのあとに来た恥ずかしさで、
顔がかぁ〜っと赤くなったのがわかった。

「おま…一目惚れって…」
『自己紹介してる時に…一瞬目があったでしょ…?』
「お、おう」
『あの時、私に笑ってくれて、嬉しかったんだ。
みんな、私の才能しか見てくれないから…』

そういうことか…でも、

「俺だって、お前に一目惚れだったんだぜ。
目が合った時、ちゃんと笑えてるか不安だったし…」
『眩しかった…かっこよかったよ』
「なっ…!!」

俺に笑顔を見せてる苗字の方が眩しいと、
心の中で言いながらでこぴんをくらわせてやった。

あの時、俺に向けて言ってくれた言葉―


―私は最初から来栖くんがいいなって思ってました―


「…名前」
『何?』
「ありがとな」


驚いたような、照れているような表情をするこいつと一緒に、
曲を作っていこうと思った。

あと、おっさんにも少し感謝だな。




end


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