短編 | ナノ


  ガラスな彼女


ガラッ


「翔ちゃん!」

「あ、薫」

「またきちゃった」


僕は今日も翔ちゃんのお見舞いにきた。

翔ちゃんは心臓に病気を持ってて、何度も
入退院を繰り返してる。

病室に入った僕は、何かいつもと
違うような、違和感を感じた。


『あの…』


消え入りそうなか細い声が聞こえてきた。


「ん?ああ、悪い苗字、起こしちまったか?」

『ううん…少し前に起きてたから大丈夫』


翔ちゃんの誰かの名前を呼ぶ声に反応して、
隣との間にあるカーテンがシャーッと開いた。

そこにいたのは、僕たちと同じくらいの女の子。


「翔ちゃん、その子は…?」

「ああ、薫は昨日と一昨日と来なかっただろ?
こいつは一昨日入院してきたんだ」

『初めまして、苗字名前です』

「…来栖薫です」

『私の声聞き取りづらいでしょ…?』

「えっ、あっ…」


確かに小さくて細くて、外から聞こえる
車の走る音とかでよく聞こえない。


『ごめんね、私喉の病気で大きな声出せないんだ』


苗字さんは悲しそうに、だけど、どこか諦めたような顔をしていた。


「…治らない病気…なんですか…?」

『…』


彼女は首を横に振った。


『わからないの』

「あの…僕の夢…医者になることなんだ。
だから、僕が翔ちゃんと苗字さんの病気、治してあげる」


二人は驚いたような表情になった。

あれ…僕、変なこと言っちゃったかな…。


『…ありがとう』

「…!!」


初めて見た彼女の笑顔。

少しあどけなさを残した顔で、綺麗に笑った。

お礼を言ってくれた声も、透き通ってて、
僕の中にすとんと入ってきた。



僕はその日、初めて翔ちゃん以外の同級生に気になる人ができた。



続く…かも


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