いつか来る筈の未来
*チェルシー
気付けば目の前に、自分と同じ顔をした少年が立っていた。
彼の目は固く閉じ、体も微動だにしない。まるで凍っているようだった。
「だれ……?」
問いかけてからハッとする。
知っているのに、知らないふり。
だから自分は弱い。だから彼はここにいる。
「ごめん、ね」
一歩近付く。
彼の頬にそっと触れた。
彼の目は固く閉じられたまま。
「弱くて、ごめんね……。私の、代わりに、たくさん傷付けて、ごめんね……」
違う。伝えなくてはいけない言葉は、こんなものではない。
だから、自分は弱い。
でも、『弱さ』に逃げるのは、もうやめよう。
ぽろりと自分の瞳から涙が流れた。
「あり、が、とう……」
そろりそろりと近付いて、彼の体を優しく抱きしめる。
「ありが、とう。いつも私を守ってくれて。君がいたから、私は生きてこれたよ」
はっきりと告げる。
その温もりが感じられるように、腕に力を込めた。
「もう、終わりにするね……。私は、貴方を、受け入れるから……」
見て見ぬふりはやめよう。
私と彼は別人格であって、別人ではない。
精一杯の笑顔を彼に向ける。
「ありがとう。ユーリ」
彼――ユーリと目が開き、瞳が合う――瞬間、ぱあっと彼の姿が桜の花びらとなった。
そのまま、儚く舞い散る桜と優しい笑顔を残して、ユーリは消えた。
私は、この光景を――二度と忘れない。