僕達は依存して




・満月と尊斗(満月導入話)




心を抉る容赦無い言葉が頭の中を反響している。ぐわんぐわんと鳴り響くそれに頭が鈍く痛む。
いっそのこと痛みで頭が割れてしまえば、もう学校に行かなくて済むのに。
いや、学校に行かずにここに閉じこもったとしても、待っているのはまた違った心を抉る言葉。
自分が安らげる場所などこの世に一つしかないことを満月は知っている。



「みーくん、どこ……?」



ベッドに横たわったまま手をひらひらと彷徨わせる。
満月がこの世に一つだけある安らげる場所――双子の兄の尊斗の温もりが感じられる場所。



「みー、くん。みーくん」



呼べば必ず来てくれる優しい兄。言葉は悪いしぶっきらぼうだが、その中にある優しさを満月だけは知っている。



「どこにいるの、みーくん……」



じわりと視界がぼやけ、生温かい何かが静かに頬を伝う。満月はそれに気付かず、ただ必死で尊斗を呼んだ。







額にひやりと冷たい何かを感じ、満月は重たい瞼を開いた。どうやら寝ていたらしい。
ふと横を見ると、求めていた人が隣にいた。



「みー、くん」

「まだ寝てな。熱あるんだろ」



そっと額を押され布団に戻される。抗う力さえなく倒れ、熱があると初めて気付く。



「はぁ、最近は風邪も引かなくなってきたのになぁ……」



へら、っと笑って見せたが、尊斗は何も言わずただ睨むように満月を見つめ続けた。



「どう、したの?」

「満月。何で……。何で、俺に言わなかったんだ……」



その沈黙に耐え切れず、尊斗は怒ったような、悲しむような顔で言った。
満月は何のことかわからず首を少し傾げる。



「こんなになるまで溜め込んで……。何の為に俺がいると思ってるんだ。そしたら、あんな奴らに……!!」



珍しく声を荒げる尊斗の言葉で、満月は全てを察した。そして、尊斗が全てを知ったということは――




「もう、全部終わったから」



あぁ、やっぱり。


その言葉が何を意味するのかすでに満月にはわかっていた。言葉通り“全てが終わった”のだ。
あの子らの心無い言葉を聞くことも、辛くて痛くて苦しいことされるのも――……あの子らと『友達』でいることも。



「また、失敗しちゃった。えへ、ダメだなぁ。いつもごめんね」



わざと軽く言うが尊斗の眉間に深く刻まれた皺は少しもほぐれない。



「だから、いつも言ってるだろ……」

「……」

「他人を信用するなって。あいつらは、満月のことを都合のいい道具としてしか見てなかった。そんな奴らに操られるなんて、バカがやることだ」

「うん。でも、信じてみないと始まらないよ? あたしは、みーくんがいるこの世界は、もっと素晴らしいものだって信じたい」



強く告げれば尊斗はそれ以上何も言わず黙り込んでしまった。

馬鹿。

その小さな呟きは、まるで泣いてるようで、満月は尊斗の手を強く握り締めた。




僕達は依存して生きてるんだ





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