赤に染まる白



※Twitterお題:カユラちゃんとレイア





ひらひらと今も花びらを散らせている一本の木の下にレイアは立っていた。
その舞い散る花びらは真っ白なのに、何故かレイアはそれが桜であると知っていた。何故知ってるのかはわからない。ただ、それが桜であることは知っていたのだ。
地面に落ちた花びらは、まるで雪の結晶のように白い。自分の知る桜とは程遠いその白さに、レイアは首を傾げる。



「なんで、こんなに真っ白なんだろー?」

「なにかいったぁ?」



近くにいたカユラが、レイアの声を聞いて振り返る。桜の白に負けない白い髪が、さっと翻った。



「これなぁに?」

「桜だよう」

「桜? こんなに真っ白なのにぃ?」



隣に立ったカユラは、レイアと同じようにその木を見つめ首を傾げる。そして、ぴょんと跳ね、両手で舞っている花びらをキャッチしようとした。それでも花びらはするりとカユラの手を避け、地面に落ちて行く。



「何やってるんだよう」

「知らないのぉ? 地面に落ちる前に、花びらをキャッチ出来たら、恋が実るんだってー」



えい、やぁと気の抜けた声をあげながら、カユラはぴょこぴょこ跳ねる。レイアも真似して花びらに手を伸ばすが、掴まらない。



「ぼくも桜に関する噂を知ってるよう」

「なぁに?」

「桜の下には死体が埋まってるんだよう」

「ふぅん、怖いね」



対して怖くなさそうな声音でカユラは言う。レイアもその反応にさして興味はなかったので、何も言うことはなかった。



「カユラも、怖い噂知ってるよぉ」

「んー、なにー?」

「桜は、血を吸って紅く染まるって」

「ふぅん、じゃあ、この桜はまだ血を知らないだねー」



くるっとカユラがレイアの方を振り返った。その手に光る何かを見た瞬間、肩に激痛が走る。



「なに、するんだ、よう……」

「こーすれば、紅く染まるかなぁって」



じくじくと血が滲む肩を手で握り締めるレイアに、カユラは平然と返す。



「血まみれの死体を、桜の木の下に埋めればいいのかなぁ?」

「そーすれば、どちらの噂もほんとになるよぉ?」

「ねぇ、きーてるの?」



カユラは普段と同じようにレイアに話しかけるが、その間にレイアにナイフを突き立てる。その度にレイアからは呻き声が漏れるが、カユラはそこには触れずただただ話しかけた。



「返り血で染まった花びらも、これはこれできれいだねー」

「ねぇ、レイア」

「どーして返事しないの?」

「きれいだね、れいあ」



自身の白い髪すら赤に染めながら、カユラは淡々とレイアを傷付けていった。
霞む視界の中、レイアは微かに笑い、ぽつりと呟いた。



――これじゃあ、ぼくはみえないよう














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