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「ちょこまか鬱陶しい!」

 キレた徒紫乃が四方に凍える風を放った。もともと、威力は大したものではない。だが混ざる氷に触れた場所から凍てついていくから、対象の動きが自然と鈍る。そういう魔法だ。屋根の上に逃げた刻雨が、呆れたように溜め息をつく。

「……本当に、攻撃魔法は苦手なんですねー」
「黙れ!そして手伝え!1人で先に捕まえやがって!絶対にお前が大怪我しても魔法は使ってやらん出来るだけ痛く治療してやる!」
「……治療はするんですね」

 だって市長が仲良くしろって!心底嫌そうに叫んでから、刻雨の方に流れ弾が当たるように鬼火を放つ。軽く避ける刻雨の手には既に赤いリボンの召喚獣がいた。一方。青いリボンの召喚獣はいまだにたにたと宙を舞っている。もうあと間もない。徒紫乃はいらいらを隠そうともせずにまた魔法を発動させる。
 すう、と息を吸って徒紫乃が歌う。その音は刻雨には聞こえない。微細に振動する空気に、音の存在が判るだけだ。下手に入れば巻き添えを食いそうな勢いに、なるほどこれはリトルレッドには向かないな、と思った。唯一使えるらしい攻撃魔法は精度に信頼が置けないようで、またかわされて召喚獣は飛び立っていった。苛立ちを明確に、やってられるか!と叫ぶ声がした。

「大丈夫ですかー」
「大丈夫に見えたらお前の目玉を検査にかける!」

 屋根から飛び降り、隣に立つ。かるく馬鹿にした目で見下ろせば、剣呑とした目で睨み返してくる。ただし、身長差のせいであまり迫力はない。刻雨は小さく、鼻で笑った。

「貸しにしといてあげますよ」
「黙れっ、て、このっ、下ろせ!!」
「下ろしていいんですか」
「だから黙れお前が怪我したら絶対絶対麻酔なしで縫ってやるからな!鎮痛剤も使ってやらないからな!」

 やっぱり治療はちゃんとやるんだな、とか、思いながら。刻雨は徒紫乃を小脇に抱えて屋根の上を跳んでいく。先をいく召喚獣が、にたりと笑った、ような気がした。

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共闘第二弾です!





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