図書館企画ブログ | ナノ






『加減に加減に加減を重ねて手加減してっから、安心しやがれガキ共。死にゃあしねェよ』

 嘘だろ、と思う。

「……くそったれが」

 にたにたした笑顔に固定されたそいつはひどくすばしっこい。そして小さい。それはつまり、攻撃が当たり辛いという事だ。刻雨は舌打ち一つ蹴りかかる。見かけた赤リボンはとうに逃げて足止めを食らっている。よくできた集団戦だ。刻雨の足が掠ったにやにや顔が、一匹逃げていく。土属性の魔法が効くらしい、それを不幸中の幸いととれない程度には、数が多い。視界の端に青リボン。

「三歩下がれ、」

 反射的に。跳び下がる。刻雨のいた場所に氷の混じった突風が吹き込む。近くにいたにやにや顔のいくつかが飛べなくなったらしく、もがいている。空気が振動する。刻雨は振り返って吐き捨てた。

「…巻き込む気ですかー?」
「たかがマーメイド志望の魔法に、リトルレッド志望が巻きこまれてたら世話ないな」

 片手に魔法書を持ち、馬鹿にしたように笑う徒紫乃は、青リボンが逃げた事を認めて小さく毒づいた。くそったれが、と呟く徒紫乃の服はやけに焦げていて、右腕などは軽い火傷が見て取れる。刻雨の視線に気付いた徒紫乃が憎々しげに目をすがめて言う。

「安心しなくても、アレは火属性の魔法は使えないぞ」
「暖炉に腕でも突っ込みましたか?」
「抜かせクソ眼鏡、……跳ね返されたんだよ」

 忘れてたんだ、と続けた徒紫乃の魔法書がやわく発光して、口が動く。見れば火傷の赤みが少し引いていた。徒紫乃は鬼火を操れる、過去何回か使われかけたので刻雨は記憶していた。変化魔法を跳ね返す事の出来る召喚獣、鬼火は火傷によるダメージを目的にした術だから、その範囲内だったのだろう。

「間抜けですね」
「黙れ、凍らされたいか土属性」
「マーメイドの攻撃食らうリトルレッドなんざいねーですよ」
「試すか」

 ばち、と勘違いではない火花が散ったあと、前を向く。召喚獣たちがにやにや顔を並べていた。色の違うリボンを追いかけない限り、攻撃されない限り、攻撃しない。そういう命令であるらしい。2人揃って舌打ちをする。

「先にあっち片付けますよ」
「命令すんな、治療しねぇぞ」
「怪我なんかしねーですよ、っと」

 そして魔法書を手に、駆け出した。




―――――

共闘うめぇという勢いだけで書きました。補足しますと徒紫乃くんは凍える風使えます。主な用途は嫌がらせです。
am氏宅刻雨さまお借りしました!





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