図書館企画ブログ | ナノ




 さァて、と枝折は首を傾げた。

「どうするこの馬」
「馬刺」

 剣呑に殺気を孕んで呟いたのはリザルドだった。心臓の弱いヒトならお陀仏間違い無しと思われる冷えた目でリーヴコルトピクシーを見る。魔法生物が怯えて数歩下がり、代わってかばうように前に出る影三つ。

「駄目です!こんなか弱い魔法生物を殺すなんて…!」
「全くだよ、彼に悪気は無いって言ってるでしょう!」
「あと多分、ニンゲンにはそんなにおいしくないわ!」

 よよと泣く柚上の方は無視して、リザルドはちらりと双子を見る。
 桃花祭日前夜、街を騒がせた事件は解決した。しかし得てして大変で億劫なのは、騒がしさも過ぎ去った後の、事後処理である。有志により捕獲され、図書館前広場に連れてこられたリーヴコルトピクシーを、如何すべきか。普段は引きこもってる癖に解決に尽力した双子には、さすがに強く出られなかった。

「花籠も無事でしたし、この子も反省してるみたいですし……」
「馬刺とは何ですか?」
「俺はあまり好みません」

 おずおずと言ったのがハルシエルで、とぼけているのがマルギットで、流したのがニコだ。捜索に駆け回った当事者たちは、一部を除いて広場に揃っていた。一部であるところの仇介やバルトなど無駄に責任感の強い面々はあちこちに散り、騒ぎを聞き集まった民間人達に帰宅を促している。波が引くように静かになっていく広場の中心で、今まで黙していたフィズが手を上げた。

「……考えがあるのですが」

 前置きをして、注目を集めながらフィズはリザルドに話を振る。

「祭日は、昼過ぎにパレードがありましたよね?」
「……ああ。どうした?」

 各祭日では大道芸人や見せ物を得意とする魔法使い達がパレードを行う。桃花祭日のそれは、最も大きな水路に花びらを撒きながら街を練り歩く、とても華やかなものだ。フィズはリーヴコルトピクシーを差しながら続けた。

「彼にはその先頭を歩いてもらってはいかがでしょうか。魔法生物がパレードに参加するのは珍しいでしょうから、人目を引きますしね」

 祭りに与えた損失は、祭りに貢献する事で返すべきでしょう。穏やかに締めくくってフィズはあたりを見回す。賛意を示す明るい表情が返ってくる。最後に目を向けられたリザルドは、嫌々ながらに、反対はしねぇ、と呟いた。

「俺様もいーと思うぜ、で、そいつの方はどうだ?」

 枝折がにやついて、騒ぎの渦中のリーヴコルトピクシーを見る。そばの双子や柚上、まわりのヒトビトが見守る中、それは高く高くいなないた。喜んでいる、ように見える。満足げに頷いて、枝折は観衆に向き直った。

「決まりだ野郎ども、撤収!」


――――――
こうして、桃花祭日前夜はその幕を下ろしました。


皆様ご協力ありがとうございました!予想以上に早くてびっくりしました本当にありがとうございました!
文中にて桃花祭日に反応頂けた皆様をお借りしております。





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