図書館企画ブログ | ナノ
不意に聞こえた喧騒が外から図書館の分厚い窓を叩く。徒紫乃は不愉快に目を細めて外を見た。夕暮れ時の薄暗い空気の中、三階の窓から、小さく人が騒いでいるのが見える。耳のいい自分の他にも何人かが気づいたらしく一様に下界を覗いていた。
「花籠が無くなったらしい」
「……バルトさん」
後ろから知己に声をかけられ、徒紫乃は小さな会釈を返してまた窓の外を見た。
「どうせ、祭りに浮かれた馬鹿か、はしゃいだ魔法生物のいたずらでしょう」
「だとは思うが、どうにも見つからないようだぞ。俺にまでお声がかかった」
肩を落としてこつこつと無線機を叩く。十中十であの自分勝手な館長に呼びつけられたのだろう。
「さて行くか」
「この手はなんですか」
「猫の手も借りたい」
「猫と同格扱いは不愉快です」
「猫は可愛いだろう」
俺は犬派だが、といらない情報を付け加えてバルトは徒紫乃の肩を押す。こちとら試験前だというのに、徒紫乃は小さく鼻で笑った。
「貸し1です」
「判った判った」
真面目な知己はほっとしたように頷いた。窓辺から離れ連れ立って階下へ歩む。まあ、息抜きにはなるだろう。
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あだしのくんは勉強、バルトくんは調べ物をしに図書館に来てました。バルトくんとあだしのくんは知り合い(家が隣)です。