図書館企画ブログ | ナノ




Happy Valentica's day




【01:59 p.m.】



「バルトちゃん局貸せ」
「断る」

 ケチ、と頬を膨らませ唇を尖らせる枝折に、バルトは頭痛と胃痛がひどくなった気がした。

「……緊急公用放送なら市長の許可証持って来い。それ以外なら1ヶ月以上前に申請。トップなら規則守れそろそろ市長殿の胃に穴が空く」
「大丈夫俺様ちょー優しいから」
「俺の胃にも穴が開く」
「優しくしようか?」
「おう、そうしろ。帰れ」

 ラジオ局のエントランス。というよりもまさに玄関口で、枝折とバルトが押し問答していた。遅めの昼食を、と、外に出ようとしてこれである。バルトにはつくづく運がない。ちなみに会話の最中枝折はずっとバルトの尻を揉んでいた。訴えたら勝てるとバルトは確信しているが、どこに訴えたらいいのか判らないのが問題である。さておき、枝折の手から逃れてバルトは深々と溜め息をついた。

「……一応、何に使うか聞かせてもらおうか」
「今日はウァーレンティカの日だからな」
「わかったろくでもない事だな帰れ」

 アガット・イア放送局設立当時、バルトがまだ科学班班長だったころに決めた、局員以外が局の設備を使用することに対するありとあらゆる制限は、ほぼすべて、目の前で仁王立ちしているにんまり顔の館長対策といっていい。バルトにはなまじっか経験があった。おそらくこの街で、5本の指に入る程度に、館長との付き合いは長い。それこそ班長時代、イベントごとにろくでもない事を企んでは街中を巻き込み、後始末に東奔西走した記憶はいまだ生々しい。今日の館長の悪巧みは、バルトとて聞き及んでいる。おおかた大々的に派手に告知したいだけだろう。当代の司令室の面々へと心中で手を合わせ苦労を慮った。さてそれはそれこれはこれで、館長を局へ立ち入らせることは断固阻止したい。なにより面倒くさい。

「よっしゃバルトちゃんチョコか酒くれたら引き下がってやろう」
「帰れ。そして尻を揉むな」
「この尻を前に揉まないとか尻神様への冒涜だぞ!?」
「そんな神様いてたまるか!」
「昔のえらいひとは言ったぜェ、信じるものは救われる。蓋し至言だろォ? だからチョコ寄越せ揉ませろ局を貸せ」

 わきわきと手を動かしながらにやつく枝折の眼前で扉をしめる。何事か叫んでいたが、バルトにはもう聞こえない。疲れた。疲れ切っていた。主に人生に。
 そんなバルトが館長のせいで昼食を食いっぱぐれたことに気付くのは、これより1時間後、局員からおやつにとチョコを差し入れされた時である。











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