図書館企画ブログ | ナノ
公園のすぐ傍に差し掛かる。大丈夫大丈夫いないいないここにはいない公園に入らなければ大丈夫大丈夫大丈夫うん大丈夫。じゃない。ナダドラはだいぶ泣きそうだった。折しも黄昏。逢魔が時。既にあたりは暗く、空と地面が溶け合うように曖昧なのに、地平線だけがやけに赤い。誰でもいいから来てくれないだろうか。第一希望アルニコさん。このさいマルギットさんでもいいかなぁとか思いながら、ナダドラは頼りない歩調で、ぼんやりと、手配犯が目撃された場所に向かう。生け垣と木立に囲まれた公園横の道路の、出来るだけ公園から離れた場所を通っていく。ふと顔を上げて肩にずどんと重石を載せられたような気分になった。――公園の、入り口の前を通らなければいけない。そろそろと。慎重にかつ素早く目を逸らしながら歩く。
冷たさを含んだ風が吹いた。ナダドラは髪を押さえ、そしてつい、公園の中を、見てしまった。
いた。
「……っ、」
白いワンピースがだんだん濃くなっていく暗がりの中で浮き彫りにされたように目立つ。まだ遠い場所。こちらに気付いていないかのように、ふらふらと、公園の中を歩き回っていた。大丈夫公園の外。追ってこない。追ってこない。だんだん近付いてくるその姿にナダドラは動くこともできず立ち竦んでいた。生け垣に隠れていた下半身が見える位置まで来る。足が、あった。時計塔の双子が言っていた。「追いかけてくる時は何故か足があるよ」と。つまり足がある時は、追いかけてくる時、なんではないだろうか。白い影がついにこちらを見た。目があった。気がした。ナダドラは逃げ出したいのに動かない体を恨んだ。大丈夫ここは公園の外。追ってこない。「みつけた」 え?
「みつけた」
白い影が笑った。気がした。