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「ナダドラ!」
 振り返ると角から顔を出した仇介が、こちらに駆け寄ってくるところだった。「どうしましたか?」とナダドラが訊く間に10メートル、「今暇か?」と返される間に5メートル。頷いた時には仇介は隣に立っていた。ナダドラが続ける。

「大丈夫ですけど、班長、どうかしたんですか?」
「いや……例の公園あるだろ、」

 いいにくそうに仇介は苦笑した。ナダドラの体が強張る。ナダドラの怖がりは割合に有名な話だ。同僚のハルシエルと揃って、今回の肝試し騒動を嫌がっていたクチなのだ。仇介の苦笑が深くなる。

「いや、肝試しに行けって訳じゃない。最近手配されてた痴漢、知ってるだろ?」

 肝試しを否定する言葉に、ナダドラは幾分気をゆるめて、頷いた。確かに知っている。夏休み頃から現れだしたらしい。夜、木立を利用して身を隠しながら犯行に及ぶから証拠がなかなか掴めず、数少ない目撃例からなんとか似顔絵を作り、手配されていたのだ。数回肝試しの最中現れた双子もそんな事を言っていた。仇介はやはりいいにくそうに、頭をかく。

「手配書の男に似ている不審者が噂の公園近くで目撃されたらしくてな、見に行って欲しい」
「えっ…」
「頼む! 俺今から外部任務で行ってたらTOTの時間に間に合わなくなるんだ他に空いてる奴いないしパトロールの連中はみんな離れた場所にいるみたいでここから向かうのが一番近いんだお前があそこに行きたくないのは知ってるけどアガット・イアの治安のためにここで犯人を逃す訳にはいかないのわかるなナダドラ頼むから行ってくれ」

 がっしと掴まれた肩にかかる力と、爽やかな笑顔が怖かった。仇介はやるときはやる男だった。
 頷くよりほかなかった。









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