ひとりきり | ナノ



(下宿組/歓迎会チャット後日談)




 薄ぼんやりとした光の覗く窓に、もしや、とは、思ったのだ。

「お前ら遅……ってどうした!」
「……どうもこうも」
「とりあえず刻雨君そっちのよっぱらいよこせ。おい徒紫乃生きてるか」
「しねはやておにーちゃん」
「酔ってるな、私をお兄ちゃんと呼ぶということは、とんでもなく酔ってるな!」

 歓迎会、という名目の乱痴気騒ぎが終わったのは、空の端がかすかに明るみかかる頃。よっぱらいを抱えて下宿に辿り着いた時には、もう黒々としていた空は青く褪せ、白く縁取られさえしていた。よくわからない事を言いあいながら引きずり引きずられしていく2人を見送ると、今まで影に隠れて見えなかった大家さんが、呆れもあらわにあくびをする。寝ていないのは明白だった。

「お説教は後にしといたげる」
「……」
「大丈夫?お風呂入る?入れる?ていうかその前にさ」

 額の瞳を不機嫌そうにすがめ、こてんと首を傾げて腕を組む。浮いて移動する彼は、日によって目線が違う。今日はわりに高い位置にいた。肩をすくめてこちらを見下ろす。

「何か僕らに言う事はないかい」
「……遅くなってすみませんでした」
「違うでしょう」
「ご迷惑を」
「刻雨くん」

 たぶん、と頭につけなければいけないのは、目隠しのせいで表情がみえないせいだが、たぶん、笑って、大家さんは尋ねる。それとともに浮いていた彼の高度が下がり、目線が近くなる。

「おうちに帰ったら何て言うのかな」
「…………」
「何て言うのかな?」
「…………ただいま、戻りました」

 声ばかりに怒ったような色をにじませて。けれどもはっきりそれと知れるほどいよいよ笑みは深く、彼は言った。

「おかえりなさい」



トーチカの是非




(旦那宅刻雨くんお借りしました!)
11/05/12




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