05. 鳴神大社


鳴神大社にで御参りをしていると蠱惑的な雰囲気を持った桃色の髪の女性に声を掛けられ戸惑う。巫女装束に目立つ髪飾りには雷元素の神の目が煌めく。

「お主見ない顔じゃのう」
「えっと・・・」
「そんなに警戒するで無い。妾は八重巫女この鳴神大社を束ねる宮司じゃ」

まさか宮司に声を掛けられるとはと目を見開き驚くと八重巫女は愉快に微笑む。

「御神籤の結果が悪かったかのう?」
「いえ・・・ただ自分の頑張りが足りないみたいです」
「吉が出たからと慢心すれば凶になり凶が出た際に己を見直せば吉となる。結果が悪かったからといって自暴自棄にならないように気を付けよ」
「・・・はい」

私の御神籤の結果は凶。悩みの解決の糸口になるかと引いてみたがやはり自分の頑張り次第のような結果だった。気落ちしていた私を気遣い声を掛けてくれた八重巫女は巫女装束の袖から鈴の付いた御守りを取り出した。

「これをやろう。この御守りはお主の運気を上げる物じゃ」
「え・・・いいんですか?」
「勿論じゃ、また鳴神大社に参拝しておくれ」

八重巫女から御守りを受け取る。雷元素の神の目のような色と形をした可愛らしい御守りを握り締める。確か稲妻の神様は自由自在に雷を操る雷元素の使い手雷電将軍だ。雷鳴が轟く荒海を思い出し身震いする。遠くから一度だけ顔を見た事がある。艷やかな菖蒲色の三編みに漆黒の瞳には影が覆われていた。稲妻城の最も高い場所天守閣に住まう雷電将軍は万象を凌駕する存在だ。

「気分転換に八重堂に赴いて見ると良いぞ」
「・・・八重堂」

八重堂とは稲妻にある読み本を扱う出版社だ。冒険物や恋愛物、異世界物等幅広いジャンルを取り扱っているらしい。確かに最近は仕事が忙しくゆっくりと本を読む暇が無かった。

「もしかして八重堂って・・・」
「妾の所有物じゃ」

怪しい笑みを浮かべる八重神子の姿に息を呑む。一瞬だけ八重神子の後ろに狐のような無数の尻尾が見えた気がした。興味が出た私は素直に頷き、八重神子に挨拶した後に大社を後にする。読み物に集中すれば一斗さんの事を考えるのを忘れられるかも知れないという淡い期待を持って八重堂に辿り着いた。

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