
※プリン視点
ホールケーキアイランド、南西の海岸を歩いていると見たことがないウサギのような生き物が目に涙を溜めながら鳴いていた。
「・・・どうしたの?」
「ブイブイッ!!」
必死に鳴き、私のワンピースの裾を噛む。どうやら私をどこかへ案内したいようだ。
ママのソルソルの実の能力で生まれたホーミーズ、ラビヤンに乗りウサギの後を追うと海岸の浜辺に人が倒れている姿が見えた。
慌てて駆け寄ると私と同じ年齢くらいの少女が顔色を悪くし倒れているのを見つけ慌てて声を掛けると呻き声を上げる。
「目を覚まして!」
『・・・ッ』
このままここに放置をしていたらこの子は死んでしまうだろう。
浜辺で倒れていた女の子とその傍で心配そうに鳴いているウサギのような生き物をラビヤンに乗せ急いで誘惑の森を突っ切りママのお城へ向かう。
このままの状態でママに会わせるわけには行かないため一旦自室へ向かいホーミーズ達に命令し風呂場で海水で汚れた身体を洗うと少女から唸り声が聞こえてくる。
その間、ウサギは少女の傍で心配そうに鳴いていた。
この少女のペットなのだろうか。
身体を拭き、フリルのついた可愛い白色のドレスを少女に着せ、ふかふかのベッドに休ませてあげるとすやすやと眠りついた。
「・・・どこかで見たことある顔なのよねぇ」
私は能力を使った。
メモメモの実の力は相手の脳の中にある記憶を覗く事が出来る。
相手の頭に手をかざす事でフィルム状態で記憶を抜き取り、記憶を自由自在に編集も可能だ。
少女から記憶のフィルムを抜き取り眺めると不思議な生物と麦わら帽子を被った少年の姿、そして真っ暗な空間のフィルムが見ることが出来た。
ーーーこの子まさか記憶喪失なんじゃ。
と思わせる真っ暗なフィルム。
更にフィルムを取り出してみるが全て黒に染まっていた。
じーと顔を見る。色白の肌に細長い手足。
サラサラの桃色の髪だが一部が白髪になっていた。
ウサギは「ブイ?」と可愛らしく鳴いている。
「貴方の御主人は無事よ。・・・記憶を無くしているみたいだけどね」
「ブイッ!?」
どうやら人の言葉がわかるようだ。
ママが新しく作ったホーミーズなのか、それともミンク族なのかはわからないが。
私は机の引き出しから懸賞金リストの束を取り出し捲ると目を見開いた。
「超新星・・・魔獣使いッ」
間違いない!
この子はあの魔獣使いだ。
ーーー早くママと兄さん達に知らせないと!
私はホーミーズにこの事を知らせていると少女は目を醒ましゆっくりと身体を起き上がらせた。
『・・・ここは』
「ここは私の寝室よ。懸賞金4億2千万ベリーの超新星、魔獣使いさん」
『・・・・・超新星?魔獣使い?』
「貴方の事よ。何も思い出せないわけ?」
『・・・私は・・・・・』
「・・・ッ!名前は?名前くらい覚えてるでしょ?」
『・・・・・ユウナ。・・・ッ!』
少女は震える身体を抱え泣き出した。
相当怖い思いをしたのだろう。
海岸で倒れていたところを見るに船から転落したか。
この新世界の荒波と嵐の中を溺れていたと考えるだけで地獄だ。
『怖かった・・・ッ!ずっと暗くてッこのままッ・・・死ぬんじゃないかって』
ひっくひっくと泣きじゃくる少女を抱き締める。
「大丈夫よ。貴方は助かったんだから」
『ッ・・・!』
私の胸元で泣き喚く少女の頭を優しく撫でた。
しばらくすると少女は落ち着き、赤く腫れた目元を手の平で擦っている。
やはり間違いない。
この子は元白ひげ海賊団、現麦わらの海賊団の魔獣使いだ。
だけどやはり記憶を失っているようだ。
これの状態でママの役に立つのだろうか。
「あの妙な生き物の事は覚えてるかしら?」
『・・・ポケモンの事ですか?』
「ポケモンっていうの?よく分からないけど凄く強いんでしょ?今出せる?」
『・・・私の鞄はありませんでしたか?』
私は浜辺で倒れていた少女が着ていたボロボロの服と鞄を渡すと鞄の中から丸い赤白のボールを取り出すと手を止めた。
『そのイーブイは貴方のポケモンですか?』
ウサギのような長い耳と、首の周りを覆う襟巻きのような毛が特徴的な生き物が鳴いた。
「はぁ?違うわよ。貴方のペットでしょ」
「ブイッ!」
『え・・・』
少女は不安そうにウサギを見ると少女にすり寄っていた。
『この子がポケモンのイーブイです』
「・・・これがそのポケモン?」
『はい』
「ブイ!」
イーブイは飼い主にすり寄り可愛く鳴いていた。
「うーん・・・ママの前ではもう少し強そうなポケモンを見せてくれないかしら?」
『・・・ママ?』
「ビッグマムのことよ。私はビッグマムの娘なの」
フフンと胸元に手をやり自慢げに話すと首を傾げていた。
「まさか・・・四皇の事も忘れたわけ・・・」
『すみません・・・自分の名前とこの子(ポケモン)達の事しか思い出せませんッ』
申し訳なさそうに頭を下げる少女に対して私は小さく溜め息をついた。
相当なショックとストレスが原因で記憶喪失になったのだろう。
さて・・・どうしたものか。
頭を悩ませているとホーミーズから声が掛かった。
ママがお呼びのようだ。
「とりあえずママに会って話をしましょう。これからどうするか決めるのは貴方次第よユウナさん」
『・・・・・あの』
「・・・何?」
『名前を聞いても宜しいでしょうか?』
「あぁ、私はシャーロット・プリンよ。よろしくね」
『はい!助けて下さり有難うございましたプリンさん』
笑顔で微笑む少女に思わず視線を逸らしてしまう。
助けて良かったのだろうか。
素直にママの傘下に入れば助かるかもしれないが、もしママの誘いを断ったら彼女は殺されてしまうだろう。
「・・・その前に、その姿でママや兄さん達と会うつもり?」
『え?可愛いワンピースですが』
「違うわよ!その髪よッ」
ユウナはボブカットの髪を触り整えているが私が言いたい事とは違う。
手鏡を見せると顔を青ざめた。
『なに・・・この髪』
一部が真っ白に染まっていた。
ストレスから白髪になるとは聞いたことがあるが。
「私が見つけた時は既にそうだったわ。どうする?このまま人前に出る?それとも染める?」
『・・・ッ!黒に染めて下さい』
桃色の髪に触れる。
正直こんなに綺麗だから勿体無いと思ったが。
「綺麗には染まらないかも」
ホーミーズに命令し急いで髪を染めると、
白髪が混ざった桃色の髪は黒では無く、紺のような色になってしまった。
「これでどう?」
『・・・有難うございます』
手鏡を見て、泣きそうに微笑む少女に胸の奥が痛くなった。
「・・・こっちよ」
前髪で隠しているもう1つの瞳は切なそうに瞼を閉じた。
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