
宝物庫から戻って来た私は自室に戻る。
あの巨大な石を写せる程の紙を数枚と写しに必要な墨を用意しなければ。
今から用意を始めれば怪しまれる為、明日にでも用意すればいいかと考え直す。
明日は首都スイートシティに行き、プリンちゃんのウェディングドレス選びがあるからだ。
明後日にプリンちゃんの結婚式がある。
助けてもらいここに住むようになってからもう数週間になるのか。
未だに全ての記憶を思い出せず、前の私を知っている人達を悲しませてしまっている。
ーーーごめんなさいと謝ると涙が溢れて来た。
広い部屋に1人。
彼はいつ帰ってくるのだろうか。
結婚式には出席するのだろうか。
薬指に嵌めている指輪が薄桃色に輝いた。
『・・・カタクリ様』
未だに帰ってこない彼の姿を思いながら、モンスターボールを抱き締め、ベッドに横たわり眠りについた。
泣き声が聞こえてくる。
悲嘆に満ちて泣き喚くその声を私は知っている。
声が出ない。
抱き締めようにも、身体は動かない。
ただ何処からか聞こえてくる泣き声を聞いていることだけだ。
閉じていた瞳を開くと、目に入ったのは最近になってようやく見慣れた天井だった。
瞳からは一筋の涙が流れ落ちる。
早朝に目が覚めてしまい、ベッドから起き、顔を洗い髪を梳かし、ソファに座り新聞を読むとジンベエさんについて書かれてあった。
ビッグマムを裏切ったが、落とし前に怖じ気づき願いを取り下げたと書かれている。
あんなルーレット回す必要なんてない。
死と悪意しかないビッグマムの理不尽な提案に腹が立つ。
寝間着から白色のレースが付いてあるワンピースに着替え、城を出ると3将星クラッカー様の姿が見え声を掛けた。
『クラッカー様』
「ん?あぁ、お前か。何処かに出掛けるのか?」
『はい、プリンちゃんのウェディングドレスを選びに首都へ』
「そうか・・・」
何だかいつもより元気が無いように見える。
それに腰に巨大な剣を携えている。
敵(侵入者)でも現れたのだろうか。
私の視線に気づいたのかクラッカー様はニヤリと微笑み剣を見せてくれた。
「剣の名はプレッツェル。この世に2本と無い名剣だ」
クラッカー様はビスケットを生み出すという非戦闘向きと思われる能力でありながら、鍛え上げられた能力に本人の覇気をはじめとする基礎戦闘力も加えて、総合的な戦闘力は凄まじいものとなっている。
ただし本人の性格上、痛いのは嫌なため直接攻撃することは少なく、ビスケット兵を纏った状態で戦うらしいが。
『・・・敵でも侵入して来たんですか?』
「あぁ、そうだ。危険だから誘惑の森に近づくなよユウナ」
頭を撫でられ『はい』と返事をした。
「お前に怪我されたらカタクリの兄貴に怒られるからな」
『・・・どうしてカタクリ様が?』
頭を傾げるとクラッカー様は重い溜め息を吐いた。
「ユウナが大切だからに決まってるだろ」
『・・・そう・・なんですか』
「当たり前だろ」
その話を聞き、頬を赤らめるとクラッカー様にデコピンされた。
痛みから額を押さえると彼は微笑み、両手を叩き鎧人形を生み出し誘惑の森へ行ってしまった。
3将星自ら出向く敵ーーー?そんなに強い敵が来たのだろうか。
ふと、麦わら帽子を被った少年を思い出したがまさかと思い、首都へ向かった。
この時に誘惑の森へ行かなかった事を私は後悔する事となる。
首都スイートシティへ向かう途中で紙と墨を購入し、それをイーブイに渡し私の部屋に置いてきて欲しいと頼んだ。
夜中にでも侵入して歴史の本文の写しを手に入れる為に。
久々にプリンちゃんと会えるため私は嬉しく思っていた。
結婚式の準備が忙しいのかここ数日プリンちゃんやブリュレさんと会えなかったから。
『プリンちゃん!』
「・・・ユウナちゃん」
なんだか元気が無いように見える。花婿さんやビッグマムと喧嘩でもしたのだろうか。
何せ私は結婚式のスケジュールや花婿さんの顔すら見たことが無いからだ。素敵な人だと言う話は聞いたが。
『・・・どうしたの?』
「ううん、なんでもないわ」
私はプリンちゃんと共に服屋に入り、ウェディングドレスを選び始めた。
何故かタマゴ男爵もおり、監視されているかのかと不安に思ったがどうやらプリンちゃんのウェディングドレスを選びに来たようだ。
『Aラインのドレスも良いし、マーメイドラインやスレンダードレスもシンプルで上品で素敵だし・・・あっちもそっちも全部似合うし、悩むなぁ。プリンちゃん新郎様の好みは分かる?』
「え!?そんなまだ一度しか会ってないし・・・・・」
プリンちゃんの身体に当ててドレス選びをしていると「あのね・・・ユウナちゃん」と名前を呼ばれ顔を上げる。
表情が曇り、元気が無い。
政略結婚と言ってもプリンちゃんと花婿さんは両想いみたいだし問題無いと思っていたが。
『・・・どうしたの?』
「ちょっとだけ用事があって」
「今はドレス選び以上に大切な用事はありません!聞き分けてシルブプレプリン様!」
用事に出掛けようとしたプリンちゃんを止めたのはタマゴ男爵だ。
私は今日を楽しみにしていたから用事があると言われて正直悲しかった。
顔を俯けていると、
「ーーーユウナさん!!」
と窓から誰かが私の名前を呼んだ気がし、慌てて窓を見るが誰の姿もない。
『・・・?』
不思議に思い頭を傾げるとタマゴ男爵との話し合いが終わったのかプリンちゃんはそのままドレスを選ぶ事となったのだった。
『・・・用事があるなら行っても良いよ?』
「ううん・・・大丈夫よ」
『・・・・・無理してない?』
「まさか、ユウナちゃんにドレスを選んでもらえて嬉しいわ。このドレス可愛いわね」
プリンちゃんは真っ白のドレスを手に取り微笑んだ。
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