
ホールケーキアイランドに戻ってきた私は首都であるスイートシティに足を運んだ。
万国の住民は半年に1回、安全と引き換えに1ヶ月分の寿命を支払うらしい。
これを条件に万国での生活と身の安全を保証されているのだ。
更にビッグマムの夢は世界中全ての種族が差別なく共存する理想郷の建国で彼女の縄張りである万国(トットランド)には世界中の様々な種族が暮らしている。
結婚してから任務に出ることも仕事を頼まれることも無く、暇な1日が過ぎていく。
周囲からは「身体を大事にして下さいね」と言われる事が多く、有難うございますと笑顔を見せつつどうして私の体調を気にするのだろう?と頭を悩める。
カタクリ様はしばらく任務から帰って来ないし、部屋でポケモン達と過ごしていても身体が鈍ってしまうため、私は城の外に出た。
どこもかしこも甘いお菓子の香りが漂う。
空を見上げると青空が広がっていた。
旅に出たいなと思ってしまうのはポケモントレーナーとしてのさがなのか。
だが万国から去れば殺されてしまう。
私はポケモン達だけでも元の世界に帰してあげたかった。
どうにかして帰る方法は無いものか。
必死に記憶を思い出そうとすると以前どこかで読んだ異世界に繋がる方法の論文を読んだ事を思い出した。
だが詳しい内容までは思い出せない。
気分転換に街中を歩いていると声が掛かった。
「まさか・・・・・ユウナくんなのか?」
『え・・・』
振り返るとそこには鮫のような巨体な身体をした魚人族の男性の姿があった。
『・・・初めまして』
小さく頭を下げると魚人の男性は目を見開く。
初対面であるはずの人が、どうして私の名前を知っているのだろうか。
「どうしてここに・・・ルフィくんとは一緒では無いのかっ!?」
『・・・・・ルフィくん?』
その名を聞くと頭がぼやーとする。
もしかしてこの人は以前の私を知っているのだろうか。
『私の事を何か知っているんですか?』
プリンちゃんもブリュレさんもカタクリ様も記憶喪失前の私については多く語ってくれなかった。
どうやら麦わらの一味という海賊団に所属していたらしいが。
「・・・ッ!忘れてしもうたのかっ」
『・・・・・すみません』
傷ついた表情を浮かべた彼に慌てて謝ると「いや・・・だが、無事で良かったわい」と頭を撫でられた。
「寿命を取られたりはしておらんか?」
『はい』
「わしゃあ今万国に戻ってきたばかりでのォ。お前さんがここにいるとは思わなんだ」
『あの・・・お名前を聞いても宜しいですか?』
魚人族の彼は「ジンベエ」と名乗った。
人通りがある首都から離れ、海岸で話をすることになった。青空の下にどこまでも続く水平線が見える。
名前を聞けば何か思い出せると思ったが。
更に彼は、魚人島出身のジンベエザメの魚人で、四皇"ビッグ・マム"率いるビッグ・マム海賊団傘下タイヨウの海賊団船長にして元王下七武海であると話してくれた。
『傘下の方だったんですね』
「あぁ、だがわしはここを去ろうと思うとる」
『・・・え』
「麦わらのルフィの元へ行きたいんじゃ。いずれ世界を変える男なんじゃ!!まだ若いが!!この海の王になるのは現四皇の誰でもない!!麦わらのルフィじゃとわしは思うとる!!わしゃああの男の力になりたい!!!麦わらの船に乗り、この命をルフィの為に使いたい!!!結果それは魚人族が真の自由を勝ち取る旅にもなるハズじゃ!!」
『・・・真の自由』
魚人族が迫害され差別を受けている事はペロスペロー様から聞き、学んだ。
海底一万メートルという深い海の底に魚人島があるらしい。未だに陽の光を浴びれず暗い海の底で過ごしているらしい。
「わしゃァ、ユウナくんを連れてルフィくんの元に帰したいが・・・っ」
『傘下を辞めたいという人は全員ビッグマムに殺されるそうです』
「・・・ッ!ユウナくんも傘下に入ったのじゃな」
『はい・・・自分の身とポケモン達を守るために』
私は麦わらの一味という仲間を裏切った事を知り、泣きそうになる。
いや、何度もプリンちゃんから聞かされたが今まで実感が無かったのだ。
だけど、今私を知っている人に出会い真実を聞かされ胸が張り裂けそうになる。
「・・・ビッグマムは傘下に迎える者には政略結婚を義務付けておる。ユウナくんは一体誰と・・・」
手元を見るとキラリと薬指に嵌めているピンクダイヤモンドの指輪が光る。
『・・・・・3将星のカタクリ様と』
「なんじゃと!?」
歳が離れすぎてるから驚かれたのか、それとも彼が強すぎて私には合わないと驚かれたのか。
どちらにしろ端から見れば私とカタクリ様は身分違いの不釣り合いなのだ。
「そうか・・・あやつと」
『えっと、とても優しい方ですよ?』
「子供は出来たのか?」
『・・・え?子供はペリッパー(コウノトリ)が運んでくるんですよね?』
その話をしたらジンベエさんは頭を抱え「子供は出来とらんようじゃな・・・」と呟いた。
プリンちゃんやブリュレさんにもペリッパーが運んで来ると言ったら頭を抱えられたし、もしかして・・・
『違うんですか!?』
「いや・・・まぁ、そうじゃな。いずれ知れば良いことじゃ」
と微笑まれながら頭を撫でられた。
『でも私、ビッグマムに子供を作れと急かされてまして・・・このまま子供が来なかったら私は殺されてしまうのでしょうか』
「・・・大丈夫じゃ。カタクリは強い。あやつがユウナくんを守るじゃろう。現に寿命を取られてはおらんではないか」
確かに。
今まで寿命を取られていないのはカタクリ様に守られているお陰だったのだろうか。
もしそうなのであれば私は彼に感謝しきれない恩が出来たことになるが。
「ユウナくんがここにおるということを知れば必ずルフィくん達が迎えに来るはずじゃ。それまで堪えて生き延びるんじゃ」
力強く肩を握られ、私は頷いた。
『はい』
籠の中の鳥は嫌。
自由に羽ばたいて世界に出たい。
失われた記憶を取り戻し、ポケモン達を元の世界に帰すためにーーー。
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