※カタクリ視点


ナワバリに侵入してきた敵を倒し、帰る頃には夜空に星が瞬いていた。

針は11を挿し、家に帰る頃にはユウナは眠りについているだろう。

黒のグローブを外し、薬指に嵌まっている指輪を見る。
薄紅色のダイヤが幻想的に輝きを放っていた。
緊張しながら嵌めてくれた指輪を見るだけで不思議と胸の奥が暖まる。


ママに早く子供作れと急かされ、部屋まで用意されたという事を聞き頭が痛くなった。


用意された部屋に入ると、まだ明かりがついていた。おれの帰宅に気づいたユウナは笑顔で駆け寄る。

『おかえりなさいませ』

「・・・まだ起きていたのか」

日付が変わる深夜。
とっくに寝ていたと思っていたが。

『すみません・・・考え事をしていまして』

「何か思い出したか?」

ユウナは頭を左右に振り、切なそうに微笑んだ。

『故郷の事を少しだけ思い出しましたが他には何も・・・』

異世界。
本当にこことは別の世界があるのかと疑っていたが、ユウナが見せた生き物(ポケモン)や変わったきのみに奇妙な道具。

全てが見たことが無いものだった。


『あの!カタクリ様』

「・・・?」

ユウナはラッピングされたドーナッツをおれに差し出してきた。

『プリンちゃんとブリュレさんと一緒に作ってみたんです!貰ってくれませんか・・・ッ!?』

頬を真っ赤に染めているユウナを見てから、ドーナッツを受け取りラッピングを外し一口でドーナッツを食べる。

その姿を見たユウナはポカンとした表情をしていた。
おれの口元が見えると思っていたのだろう。


「旨かった・・・・・もう遅い。寝ろ」

『・・・はい。ですが』

ユウナの視線の先には一台の巨大なベッドがあった。

「おれの事は気にするな」

『いえ!カタクリ様がベッドで休んでください。私は床で大丈夫ですので』

野宿に慣れてますのでと言い、床で休もうとしたユウナの腕を掴み、両手で抱えベッドに置くとユウナの頬が赤く染まっていた。


不思議に思い、頬に手を添えると潤んだ瞳でおれを見つめ名を呼んだ。

『・・・カタクリ様』

ファーで隠してある口元に触れようとしたユウナの手を掴むと傷ついたような表情を見せる。

『ーーーっ!すみません』

「・・・いや」

お前になら見せても良いのかも知れない。

だが、もしこの口を見せ怖がられたらーーー。


『私・・・カタクリ様の事をもっと知りたくて』

掴んだ小さな手が震えている。
こんなに細く小さな手で今まで一人で戦ってきたのか。

「・・・・・お前になら」

『・・・カタクリ様?』

「見せても平気かもな」

ずっと人前でファーを取ることを拒み、隠してきた口元を見せた。


『ーーーっ』


普段隠している口元は、裂けた頬を縫っており、口からは鬼か虎のような禍々しい牙が生えている。

驚いた表情を浮かべたユウナの唇に食らいついた。

『ん・・・』

無数の牙がユウナの唇や顔に当たる。
口の中に舌を絡らませると声が漏れた。

『あ・・・っ』

「ーーーッ」

息が苦しくなったのか胸を叩かれる。

唇を離し銀糸が二人を繋いで、ぷつりと切れた。


はぁはぁと肩で呼吸をするユウナの姿に胸の奥が熱くなる。


強引に決められた結婚相手。
まだうら若く力も強さも無いと思っていたが違った。
過酷な旅を続け、考え悩み続けていたのだ。


この感情は何なのか。
それはとっくに気づいていたが気づかないフリをしていた。


『カタクリ様・・・?』

「・・・おれが怖くないか?」

ユウナは目を見開き驚いた表情を浮かべたが、直ぐに微笑んだ。

『怖くないです。カタクリ様はいつも優しくてカッコいいですよ』

蔑まれてきた容姿を見せたが、ユウナは気味悪がらず、むしろ嬉しそうに微笑んでいた。

そんな彼女の優しさに触れたおれは一筋の涙を溢すと優しい手つきで涙を拭き取り微笑んだ。

『カタクリ様に出会えて本当に嬉しかったです。こんな私に優しく接して下さり有難うございます』

「ーーーユウナ」

化け物と呼ばれ続けたおれを怖がらず愛してくれた少女を抱き寄せ、再び唇にキスを落とす。



どんな化け物でさえ手懐けてしまうユウナは異名道理の魔獣使いだ。


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