
ざくざくと雪を踏む音が耳に響く。
見渡せば一面の銀世界。
そこで再び彼と出会った。
「ユウナ」
『ーーーさん』
ファー状の帽子をかぶり、黒いロングコートを羽織っている細身の男性の姿に息を飲む。
私はこの人を知っている。
貴方はーーー。
「ユウナちゃん!」
「ーーーっ!」
慌てて身体を起こし、額から冷や汗が肌を伝い荒い呼吸を繰り返す。
その様子を見たプリンちゃんは私の背中を優しく擦ってくれた。
暫くすると呼吸が落ち着き、プリンちゃんから貰ったコップに入った水を一口飲む。
冷たくて美味しい。
「・・・何か思い出したの?」
『・・・・・夢を見たの』
白銀の世界で誰かに出会ったこと。
見覚えのある人だったことを。
「そう・・・その人の名前は思い出せる?」
『・・・わからない』
思い出せない。
忘れちゃいけない人だったのに。
ふと、花瓶に活けてある向日葵を見る。
あの向日葵の花をくれた人とは別の人だとは思う。
「あの向日葵をくれた人かしら?」
『・・・違う』
それだけは分かる。
だけど、何も思い出せず靄が掛かっている頭を抱える。
このまま全てを忘れたらどうしよう忘れたくない。
大切な人達を。ポケモン達を。
「ユウナちゃん」
プリンちゃんは微笑みながら私の手を握った。
「覚えてるでしょ?昨日カタクリ兄さんと結婚式を挙げたこと」
『・・・結婚』
昨日の事を思い出し、顔を真っ赤に染め上げる。
「ユウナちゃんったら式の後に酔っぱらっちゃって可愛かったわ。そのまま酔いつぶれたユウナちゃんをカタクリ兄さんがここまで運んでくれたのよ」
『え!?』
酔いつぶれた。
確か将星スムージー様の能力で搾った甘いカクテルを貰い、飲んだような。
・・・うん。その後からの記憶が全くない。
『カタクリ様に合わせる顔が無いよ・・・』
顔を青ざめているとプリンちゃんはフフフッと笑っていた。
「大丈夫よ。そんな事でお嫁さんを嫌いになったりしないわ。ユウナちゃんはシャーロット家の一員になったんだから」
『シャーロット・・・』
「そうよ!シャーロット・ユウナ」
『私のファミリーネーム』
「ユウナちゃんは名前しか覚えてないものね」
『うん・・・でも生まれた場所は覚えてるよ』
「異世界の?」
『イッシュ地方カラクサタウン。建物と生い茂る草や華々が印象的な街なの。私はそこで一人娘として生まれ両親と共に暮らしてた。だからプリンちゃん達が羨ましいの。沢山の家族がいて明るくて楽しくて仲が良いから』
「そうね。一人は寂しいもの」
『うん、だけど私にはポケモン達がいたから』
寂しくは無かった。
親にも愛されていたし、幼なじみもいた。
ポケモンも貰ったり、ゲットしたり、旅にも出て見たことがない地へ行くのはとても楽しかった事を思い出す。
「私も行ってみたいわ。ユウナちゃんの故郷」
『是非来て。歓迎するよ』
異世界だけど。
と苦笑いを浮かべるとプリンちゃんは小さく笑い私に手を差し伸べた。
「さて、そろそろ行きましょうか」
『・・・どこへ?』
「決まってるじゃない。ユウナちゃんとカタクリ兄さんの寝室よ」
『・・・・・え』
「二人は夫婦になったんだもの。いつまでも私の部屋に置いておくわけにはいかないわ。さぁ、部屋を用意したから行くわよ#name1#ちゃん!カタクリ兄さんが待ってるわ」
プリンちゃんに引っ張られて部屋を出る。
荷物は全て運ばれているらしい。
寝起きの髪に寝間着姿のワンピース姿のためこのまま行くのは恥ずかしいのにプリンちゃんは微笑みながら私を案内する。
少し早足で歩くと廊下にブリュレさんの姿が見えた。
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