※ブリュレ視点


カタクリお兄ちゃんが結婚するという話を聞いてから私の心はどんより沈んでいた。

私は気味の悪い老婆のような姿の為に男性とお付き合いしたことさえない。
しかも顔全体に大きな斜めの傷跡があるのだ。

だけどそれで良いと思っていた。
私より上の兄や姉達だって結婚していない者は多かったから安心していたのだろう。


ーーーだから


「あんたが魔獣使いかい?」

『初めましてユウナと申します』

礼儀正しく頭を下げる少女とその隣で少女を見据えるカタクリお兄ちゃん。
二人が並ぶと身長差や体格がまるで違くて笑えてしまう。

「あたしゃブリュレだよ。宜しくね魔獣使い。ウィッウィッウィッ」

『はい!』

ニコッと微笑む姿はまるで天使のようだ。
少女の姿は若さゆえに美しく儚げで可愛らしい。色白の細い手足にさらさらの髪、そしてお兄ちゃんと同じ赤い瞳に目を奪われる。

手配書で顔を見たが確かに可愛かったが、本物は更に目を引いた。


いいわね・・・そんな美しい顔見ると切り裂きたくなるのよね。


だが、相手はカタクリお兄ちゃんのお嫁さんになる予定の子。
そして、強さと危険度の高さの象徴する4億超え懸賞金首。
一体この少女のどこが危険なのか。強力な力を使う魔獣はどこにいるのかと少女を訝しげに見るもどこにもいる気配は無い。


ーーー不思議な子。


そんなことを考えているとプリンが沢山のドレスを抱えてやってきた。


「ユウナちゃん!・・・カタクリ兄さんまで!?ちょうど良かったわ!明日の式のドレスを選んでいたの」

『・・・?プリンちゃん結婚するの?』

その言葉を聞き、私とプリンはスッ転んだ。
記憶喪失だとは聞いたがド天然のバカ娘のようだ。

「何言ってるのよッ!?ユウナちゃんとカタクリ兄さんの結婚式でしょ!!」

『え!?本当に明日式するの!?』

顔を引きつらせて驚いている。
もしかして嫌なのかしらと思ったが、当然だ。

これは政略結婚なのだから。

当人達の意思を無視して結婚させられる。
記憶を失っている為に好きな人も忘れてしまっているかも知れない。


「当たり前じゃないッ!もう式の準備も進んでるし、ママの家族だって集まってるのよ!?」

そんなプリンとユウナのやり取りを聞いていると頭が痛くなってきた。
腕を組み、壁に寄りかかっているカタクリお兄ちゃんに声を掛ける。


「お兄ちゃん・・・本気であんな子と結婚するつもり?」

「・・・あぁ」

「なんで?今更結婚だなんて・・・まさか魔獣使いの身を案じるため?」

カタクリお兄ちゃんは優しい。とても。
兄妹の事を大切にしているし、幻滅されたくなくて必死で自分の秘密を守っている。

魔獣使いを自分の妹のように思ったのだろう。自分と結婚し、シャーロットの姓を貰えれば寿命を奪われず、ホールケーキアイランドで自由に暮らせるのだから。


ーーーだけどあの子は


「魔獣使いの記憶が戻ったらきっとママをカタクリお兄ちゃんを裏切るわ」

記憶は無いけれど、あの子は麦わらの一味なのだ。
ここにいると分かれば仲間達は必死に取り戻しに来るだろう。

「あの子は人を惹き付ける魅力があるのねェ・・・」

羨ましい。
私には無い力よ。

「だってプリンがあんなに素直に笑顔で誰かと話してる姿を始めてみたんだもの」

「・・・そうだな」


プリンは沢山のウェディングドレスを魔獣使いの身体に押し付け寸法や雰囲気を確かめている。

「ほら!お兄ちゃんがユウナちゃんのドレスを選んであげなきゃ」

「・・・何故おれが」

その場から去ろうとしたお兄ちゃんを鏡の中に引き込み、ユウナちゃんが立つ鏡の前に移動させた。

私の悪魔の実の能力。
ミラミラの実の力は、特殊な鏡を生み出す鏡世界(ミロワールド)を行き来することが出来るのだ。

『ーーーカタクリ様』

「ーーーッ!」

プリンに無理やり着せられた純白のプリンセスドレスを身に纏ったユウナちゃんの姿を見て、カタクリお兄ちゃんは固まっていた。
ファーのせいで顔が良く見えないけれど、きっと頬を赤らめているのよね。

「挙式はこのドレスで行くとして、披露宴ではやっぱりカラードレスがいいかしら?」

「和装も素敵だけどねェ」

「そうよねブリュレ姉さん!和装も着るわよユウナちゃん」

『・・・う、うんッ』

「カタクリお兄ちゃんもユウナちゃんの和装見たいわよね?」

「・・・」

黙って俯くお兄ちゃんの顔を見るとやっぱり頬が赤かった。
私は思わず微笑むとそれに気づいたのか魔獣使いも微笑んだ。


ーーー祝福するわよ。お兄ちゃん。


「こんなに若くて可愛くて良い子を貰ったんだから大切にしなきゃダメよ?カタクリお兄ちゃん」

「・・・わかっている」

ファーで口元を隠すお兄ちゃんを見ると胸の奥が痛くなる。

「大丈夫よ。ユウナちゃんは受け入れてくれるわ」

「・・・・・あぁ」

そんなやり取りをしながら私とお兄ちゃんはユウナちゃんのドレス選びに付き合ったのだった。

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