誕生日だからといって、特に変わったことは無かった。
いや、まぁ、友達からプレゼントをたぁんともらったけどね?
でも、それ以外は普通なわけで。
今だって、普通に部活中だ。
特別何か変わったことを望んでる訳じゃないけど、ちょっとは刺激が欲しいよなー。折角の誕生日だし。
「ちょっと失礼」
「ほわっ!?」
なんて考えていると、目隠しをされた。声からして、犯人はジェントルマンだろう。
「何のプレイですか」
「違いますよ」
ふざけたのに普通に返された。
っていうかプレイじゃなかったらなんだっていうんだ。誕生日に目隠しとか信じられない。そんなプレゼントいらない。
「私にしっかり捕まっていてください」
「えぁっ!?どこ行くの!?」
手を引っ張られ、よろめくがなんとか踏ん張る。
「普通に部室ですよ?」
「きゃっ!皆が着替えてるかも知れないのに、入っていいの?皆の美しい肉体美を見ちゃっていいの?中学生とは考えられないようなしなやかな肉体に触っていいの?舐めまわすように見ていい?寧ろ舐めまわしていい?」
「なんでそんなにオヤジ臭い発言をするんですか」
「しちゃダメですか」
「見るのは構いませんが、舐めるのはダメです。第一、皆、着替えていませんよ」
まぁ、それはそうだ。いくらなんでも、わざわざお着替え中に私を部室に入れたりしないだろう。ちょっと残念だけど。
それにしても、じゃあなんで私を部室に招くのだろう。もしかして、誕生日パーティーみたいな!?ヤバい、超嬉しい。日頃から世話してやってて良かった。
がちゃり、とドアを開ける音の後、ジェントルマンの「入ってください」の声。
おおお…。皆が使う部室に潜入だ。別に初めてじゃないけど。
一歩踏み出す。
目隠しが取られると同時に、パパパパーンと軽快な音。
ビビった。
「ハッピーバースデー!」
いきなり明るい所に出たのと大きな音のせいで、上手く反応出来ない。
とりあえず。
「私としてはもうちょっと間を置いてからクラッカーを鳴らすべきだと思うんだがねありがとうございます」
一息でそう言う。勿論、お礼は忘れない。
「目と耳がちかちかするぅー」
目を擦り、唖然とする皆を見る。
「で?何、サプライズパーティー?」
きょろきょろと周りを見ながら言う。
どうやらレギュラーしかいないらしい。
「プレゼントは喜んでいただくよ!準備してること前提に言うけど」
手のひらを彼らに見せて言う。
自分が図々しいとは思う。だけど、これで15年間生きてきたんだ。今更直せと言われて、直せるもんじゃない。だいたい、直す気無いし。
溜め息を吐いたのは、ジェントルマンだった。
「貴女はもっと落ち着くことが出来ないのですか…」
すっげぇ呆れてる。
「私の辞書にその類の文字は無くてよ」
堂々と言うと、後ろから首を絞められた。
「そろそろ黙らんと進行役が切れるぜよ」
まぁ、ペテン師なわけだけど。
進行役?と周りを見回すと、皇帝が咳払いをした。進行役ってお前か!
「えー、本日、この良き日にマネージャーの誕生会を出来ることを…」
……え。なんか初めの挨拶長いんだけど。皇帝、進行役がそれじゃダメじゃん。
「皇帝、もっと短く。シャープに。わかった?」
というわけで、手っ取り早く切ってやる。
少し不満そうな皇帝をよそに、策謀がなにやらラッピングされた箱を持って私の前に来た。プレゼント贈呈か!やったね!
「マネージャー、日頃のお礼も兼ねて、我々からのプレゼントだ。受け取ってくれるか?」
「勿論」
私の答えはイエスのみ。
喜んで彼から受け取り、皆を見回す。
「ありがと!」
笑顔で言うと、皆、笑顔を返してくれた。
「開けていい?」
「勿論」
策謀の了解を得、私は包装紙を丁寧に開けていく。普段はがさつで大雑把だけど、こういうときは丁寧なんだよ、私。
包装紙に包まれていた箱を開けると、中には文房具一式が入っていた。
……なんとなく、わかっていたけど、わかっていたけど!皆男子だから!可愛いものは無いだろうとは思ってたけど!
でも貰えるだけいいので、皆を見回してお礼を言う。
「ところで、なんで文房具?」
「この前、シャー芯が切れたって言ってたろぃ?」
お前のせいか、ガム野郎。いや、確かに言ったけどさ。
その後は既製品のケーキを主にガム男が食べて、部活に戻って、そして今から帰ります。一人で。
「ケーキぃ…」
ガム男のせいであんまり食べれなかった。何が、マネージャーは太るからだめー、だ!私の誕生日だぞ!家に帰ったら多分あるからいいけど!
「せーんぱいっ」
「うおぁあっ!何かな赤也くん!びっくりさせないでもらえるかなワカメくん!」
「先輩、俺の名前はワカメじゃないッスよ?あと、叫び声可愛くないッスね」
おっと、思わず心の中で呼んでいるあだ名が。いや、割と普通に皆あだ名で呼んでるけど。
いや、でも今「可愛くない」とか失礼なこと言いやがったからお互い様だろ。
校門で私を驚かせやがったのは、ワカメくん、否、赤也くんだった。待ち伏せていたのだろう。
「なんだい、赤也くん。私に何か用かい?」
校門のど真ん中にいるのも恥ずかしいし邪魔になるので、聞きながら彼の隣に移動する。
「一緒に帰りましょうよ」
彼はいい笑顔で言った。
かっ、かっこいい…!というより、可愛い!
「うん、いいよ」
「決まりッスね!」
じゃあ行きましょう!と腕を引っ張られる。
帰り道とは逆の方へ歩いていく。
あれ?どこに向かってんの?これ。
「赤也くん?どこ行くの?」
「ワック行きましょうよ。俺、奢ります」
「年下に奢られるのはなぁ…」
「先輩、誕生日でしょ?」
「そうだけどぉ…」
渋る私に、ダメッスか…?と子犬のような目で見られ、思わずきゅんとした。
ああああ!!ダメだぁぁあ!!私、この目には弱いんだよぉぉお!!
「あっ…、たし分を割り勘ならいいよ!」
早口でまくし立てるように言う。
赤也くんはきょとんとした後、笑顔で、決まりッスね!と言った。
ああああ…、しっかりしろよ私…。
でも嬉しそうに私の手を引く赤也くんを見ると、まぁいっか、なんて思う。
「そういえば赤也くん」
「なんスか?」
「君個人から私へのプレゼントは無いのかな?」
「……」
赤也くんは立ち止まる。私も立ち止まる。
「…いいッスか?」
赤也くんは振り返らずに言った。彼の表情が読めない。
「何が?」
そう聞き返すと、彼は振り返った。
「俺、がプレゼントッスよ」
「……」
可愛い、否、かっこいい彼の笑顔に、私は見とれた。
その間に彼は私との間を詰めて、私の耳元に顔を寄せて、言った。
「     」
その言葉に、私は一気に赤くなる。
「あははっ、先輩顔真っ赤!」
楽しげに言う彼を睨んだり、言い返す気力も起きず、溜め息を吐く。
「……そりゃあ、赤くもなるわよ…」
ちくしょう、年下のくせに…。
今まで色んなプレゼントを貰ってきたけど、彼からのが一番嬉しい。
んでもって、超刺激的だった。
「…ありがと」
私はそう言って、驚く彼の手を自分から握った。




「あ!先輩、それ俺のポテト!」
「しーらなーい」
「先輩ぃ〜…。……隙あ痛ッ!」
「私から奪おうなんて数年早いわよ。ついでに私の唇も数年早いわよ」
「……それ、何年くらいッスか?」
「さぁねー?まぁ、でも案外さらりと取れたりするかもよ?」
「……覚悟、しててくださいね?」
「…望むところだ」




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