何故か夏の時期に部室にはかき氷機が当たり前のように置いてあったりする。
まぁ肝心の氷が手に入らないので、たまに皆で氷を買った時だけしか使えないのだけれど。
今日はオジイがサービスしてくれたから、いつもよりちょっと大きめのかき氷が食べられる。
やっぱり夏はかき氷だ。


「剣太郎の何味?」

「ブルーハワイ! 名前的にカッコいいでしょ?」

「べつにそこまで聞いてない」


そう言いながら笑うと、剣太郎は冷たいなーと言ってちょっと剥れる。
そういう反応がちょっと可愛いなんて思う。
私は王道にイチゴ味にした。
練乳もかけてなんだか豪勢に見えてくる。
聡くんが何でか酢醤油味なるかき氷に挑戦していた。
冒険好きだなぁ…。
食べてる聡くんの顔を見て察するに、多分あれ微妙な味なんだなと思った。
後でちょっとイチゴ味分けてあげよう。


「剣太郎、ブルーハワイちょっとちょうだいよ」

「うん、いいよ!」


一口分イチゴのかき氷を掬って剣太郎のブルーハワイのかき氷に乗っける。
同じく剣太郎もブルーハワイのかき氷を私のに乗っけてくれた。
ピンクと青、色合いとしては少し微妙だが、まぁ細かい事は気にしないでおこう。
ブルーハワイの部分だけを器用に掬ってぱくり、うん美味しい。


「んー……」

「どうしたの?」

「いや、まだあっちの方でもアサリ取れたかなぁって」

「……ほんとに好きだね、潮干狩り」


君テニス部でしょうが、って言ったら、テニスと潮干狩りは別なの! って返された。
あれだけアサリを採ってまだ足りないとは…剣太郎の飽くなき潮干狩りへの情熱はちょっとすごいなと思う。
でもテニス部だろ、と言いたくなる。
さすがにアサリがなくなるからまた今度にしなよ。
と助言し、それに納得する剣太郎。


「ね、来年もまたこのメンバーで潮干狩りしようよ!」

「来年って、私ら卒業してるのに?」

「卒業してても潮干狩りくらいはいいじゃない!」


ねっ? って首を傾げる剣太郎をまた可愛いなんて思ってしまった。
卒業、なんだが近頃妙にこの言葉が重みを帯びてきた気がする。
まだもう少し先の話だというのに。
ゆっくりと、しかし着実に、近づいてくるその時が……少しだけ嫌だと思った。
いつかは訪れるものだとわかっていながら、それを少しだけ拒んでいる自分がいる。
でも、剣太郎の言葉は素直に嬉しかった。そうだね、そう答えて笑ってみせた。
暑さで溶け始めたかき氷を口に運ぶ。
キーンと、あの独特の痛みが頭を襲った。




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -